院内ブログ

食べることは生きること その2(茂木美登里さん)

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ちょっと時間がたってしまいましたが、「食べることは生きること その1」の続きです。

様々な工夫を凝らして、経口摂取を続けてきた美登里さんですが、残念ながら病気は進行します。
さくらクリニック初診から約4年、病気発症から約9年経った2016年2月、胃瘻を造設して経管栄養を開始しました。

これです。☟
おヘソの向かって右上に、ポチっとついているやつ。お腹(胃のところ)に小さな孔を空けて、管を通しています。
造設するには入院が必要ですが、管理はご自宅でできます。
 

誤解される方が意外に多いのですが、胃瘻を作る=食べられなくなる わけではありません!
必要なカロリーを経管栄養で入れながら、安全な範囲内で食べることを楽しんでいる方はたくさんいらっしゃいます。
(嚥下障害と一口に言っても病態は様々ですし、食べる意欲がどれくらいあるか、どのくらいリスクをとるか、等 人それぞれではあります。食べたい気持ちがあったら、ご家族、主治医の先生、看護師さん、誰でもいいので相談してみてくださいね。)

美登里さんの場合、舌の委縮が強くてほとんど動かないのですが、ゆっくりとなら咀嚼できるし、咽頭の動きや嚥下反射は比較的よく保たれていたので、「その1」で書いたような工夫をしながら、長らく食事を続けることができました。誤嚥性肺炎をおこしたことは一度もありません。
胃瘻を作ったのは、食事に時間がかかって疲労してしまい、十分な栄養が摂れなくなったことが一番の理由でした。

食事を楽しむことに強いこだわりを持ち続けてきた美登里さん。胃瘻をつくったからと言って、もちろん食べることをあきらめるハズがありません。
病気の進行は避けられませんが、こちらも知恵を絞って応戦することはできます。その心強い味方が、訪問歯科の先生たち。
近年は嚥下評価をしてくださる訪問歯科の先生が増え、心強い限りです。
具体的には、喉頭ファイバー(胃カメラを細くした感じの内視鏡)を鼻から入れて、咽頭から喉頭まで観察しながら、食べたり飲んだりしていただきます。

この喉頭ファイバー検査のいいところは、
・我々医療チームが、客観的な情報を得られること
・患者さん、ご家族に、「ここがこうなっているから、こうしましょう」と説明する時、非常に説得力があること
です。

当院で長いお付き合いをさせていただいているのが、東京医科歯科大学病院 摂食嚥下リハビリテーション科 戸原玄(あたる)先生チーム。
食べる可能性と手段を、あらゆる角度から検討し、提案してくださいます。

昨年の朝日新聞の紹介記事 

その他
・戸原先生の取り組みを紹介したネット記事
「誤嚥を招く『嚥下障害』 85%が食べられる可能性ありのデータも」

・平成25年に岡山で公演された時の動画
「摂食・嚥下障害の評価と訓練の実際」
この動画はとってもお勧めです。
まるっと1時間19分。
とても分かりやすい講義であると共に、先生の熱意がヒシヒシと伝わってきます。嚥下障害について勉強したい方は、是非!

で、美登里さんは最近どうしているかというと、咀嚼も送り込みもかなり難しくなってしまいましたが、咽頭の動きは比較的よく、嚥下反射のタイミングは良い、誤嚥はない、ということで、こんな秘密兵器で食事を楽しんでいます。

これはいったい何かというと、10㏄のシリンジの先端に14Frの吸引チューブを接続し、7.5㎝の長さに切ったものです。
で、右側臥位で舌の中央からやや左寄りにチューブを約4.5㎝挿入して、1~2㏄ずつ(チューブ内に液体が満ちる量)を注入します。
あれこれ試した末、昨年からこの方法で定着しました。

こんな感じです。

この日のメニューは
左「ジャガイモのポタージュ パルメザンチーズ入り」
右「牛頬肉の赤ワイン煮」
これは、有難いことに 戸原先生に同行されている星先生が、美登里さんのリクエストに応じて自らていねいに調理し、それをペースト状にして持参してくださったもの。
評価もかねて、おいしくいただきました。

これは7月初旬の嚥下機能評価の時。
今回は 牛スネ肉のビーフシチュー(左)とミネストローネ(右)。
マジで美味しそうでした。

ミネストローネ(右)の方は、ビーフシチューより若干粘度が低かったため、やや食べにくく、唾液と共に少し口から出てきてしまいました。このサジ加減が難しいところです。でも、どちらもムセルことなく食べて、「おいしかった」と。


食べた後は、喉頭ファイバーでチェック。・・・ちょっと辛い。
美登里さんは 咽頭の感覚が非常に敏感で、嘔吐反射(オエッというやつ)が起こりやすいので、食べながら観察は危険。食べ終わってから検査します。
残渣はないか、喉頭侵入はないか、等々。合格でした。

検査は辛いけれど、星先生のお料理が楽しみなので、次の検査を楽しみにしている美登里さんなのでした。
ちなみに次回のリクエストは「エビ」だそうで、星先生は頭を抱えて帰ってゆかれたのでした・・・。

おまけ☟
今日の壁紙アート。
これで酷暑を乗り切って!という 製作者のメッセージが伝わってきますね。

 

 

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さくらクリニック 院長 佐藤 志津子
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佐藤 志津子
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