コロナの予期せぬ合併症
コロナの予期せぬ合併症
2020年07月31日
今回ブログ担当院長の山崎です。
皆さん新型コロナウイルスの感染拡大の影響で自粛自粛、うつうつとされている方も多いと思います。往診していると「そんなことないよー、先生も頑張ってーー」っと逆に笑顔を頂くことも多く、とても励みになります、、、
梅雨という季節柄、体調をくずし、免疫力が低下しやすくなります。そんなときに注意したい病気の1つに、帯状疱疹(たいじょうほうしん)があります。
帯状疱疹は、水疱瘡(みずぼうそう)のウイルスが原因の、痛みをともなう皮膚湿疹のことです。症状には個人差がありますが、多くの場合、からだの一部にチクチク、あるいはピリピリとした痛みを感じることから始まり、やがてそこに紅斑(少し盛り上がったような赤い湿疹)ができ、続いて水疱ができて破れ、皮膚がただれ、かさぶたができます。その間も、痛みが続きます。軽い痛みで済む方もいますが、強い痛みを感じることが多く、夜眠れないほどの痛みに悩まされる方まで、さまざまです。
また、湿疹についても、病名のとおり体の片側に帯状に広がるとされていますが、初期段階では、虫刺されやかぶれ、ほかの皮膚疾患などと思い違いする方が少なくありません。そのため、市販の軟膏などを塗っていて対処が遅れ、重症化させてしまうケースも多くみられます。
このように症状には個人差があるものの、原因はただ1つ、水疱瘡ウイルスです。水疱瘡そのものは、乳幼児や10歳以下の子供の約90%がかかる感染症ですが、そのとき体内に入ったウイルスは消滅せずに、神経節(顔面の三叉神経、脊髄神経、坐骨神経など)に数十年間も潜伏します。そのため、非常に多くの成人が水疱瘡ウイルスをもっていますが、健康で免疫力が強いあいだは活動が抑えられています。
ところが、中高年になり、加齢やストレス、疲労、感染症、生活習慣病などによって、からだの免疫力が低下すると、急に再活動を始めるのです。実際、発症者は40歳以上の世代が、約75%を占めています。治療が長引くケースもあり、発見の遅れ→治療開始が遅れ、治療にも時間がかかることになりがちです。また、目の近くの帯状疱疹→目そのものが炎症による障害(角膜炎や結膜炎)を起こすことがあります。
とくに高齢者が注意すべきは、帯状疱疹後神経痛。皮膚症状(湿疹、水疱など)が治まったあとも、痛みだけが残ってしまう状態です。これは、水疱瘡ウイルスによって、神経節が強いダメージ(損傷)を受けることによって、継続的な痛みが生じるものと考えられています。
3カ月程度痛みが継続する場合に、帯状疱疹後神経痛と診断されます。その場合は、内服薬やブロック注射などによる治療が必要となりますが、痛みが数年間も続くこともあります。
帯状疱疹と脳卒中
帯状疱疹に関連して、海外の医療研究機関からの1つの報告が注目されています。それは、帯状疱疹にかかったあと、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)のリスクが高くなるというものです。2014年4月に公表されたロンドン大学大学院をはじめとした大規模な共同研究では、かなり詳細なデータが示されています。
それによると、脳卒中のリスクは、帯状疱疹発症後1~4週(1.63倍)、5~12週(1.42倍)、13~26週(1.23倍)となっています。とくに帯状疱疹が顔面三叉神経など目に近い場所に出た場合には、それぞれ1.82倍、3.23倍、1.41倍と、リスクが高くなることが判明しています。そのため、帯状疱疹後の数日~3カ月程度は、とくに注意が必要とされます。
また、顔面の帯状疱疹ほどリスクが高いのは、帯状疱疹ウイルスが脳血管に入って炎症を起こしやすいことが原因として指摘されています。日常の予防でもっとも大切なことは、免疫力を低下させないこと。食事のバランスに気をつけ、睡眠をきちんととるほか、持病のある方は自己管理もしっかりと。
ご心配な方は予防接種もあります。
もし、帯状疱疹と思われる湿疹が出たら冷やさないこと(症状が悪化しやすい)、水疱が出たら破らないように(感染症になりやすい)、早めに主治医の先生に相談しましょう。