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利用者ブログ【第1章 6- 退院当日】

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6 退院当日

 

退院の日は、メインの担当だった看護師さんの出勤日に合わせて決めました。当日は9時までに病室を出て10時にはすべての退院手続きを済ませる必要がありました。

病室で残っていた私物を整理し、看護師さんが最後のバイタルチェック。

 

【お世話になった皆さんとのお別れ】

担当の看護師さんと別れを惜しんでいると、他の看護師さんやリハビリスタッフさん、介護士さんも次々顔を出してくださいました。

慌ただしく時間が過ぎる中で、病棟はいつもどおり朝9時開始のリハビリ準備へ進んでいきます。

部屋が2階でしたので、そこからエレベータで下りるのが最後の儀式です。ホールにはリハビリを一緒にやっていた「同期」ともいえる患者さん(ほとんどが高齢の患者さん)が集まってくださいました。

回復期リハビリ病院は、急性期病院と異なり一度退院すると(その入院の原因となった傷病では)戻ることはありません。

「一足お先に卒業します。皆様もお大事になさってください!」とお別れの挨拶。ちょっと寂しい気持ちにもなりましたが、息子はエレベータに乗りこんで満面の笑顔で皆さんにご挨拶していました。

病院では車椅子のまま乗り込める福祉タクシーの利用を勧められましたが、自家用車で帰ることにしました。

ここから先は親子だけでの行動です。車椅子から車の座席へ初めての移乗にチャレンジ。

家の車は、小型のハッチバック型で少し車高が高いく、ドアの開閉時や座席にはゆとりがあって移乗させやすい助手席に乗せることにしました。

車があると便利ですが、身体介助や運転そのもの以外にそれなりに重い車椅子の上げ下ろし、吸引器その他の医療物品などの準備の負担が増えました。

また、息子はシートベルトをしているとはいえ突然のてんかん発作もあり、強い発作ですと硬直しながら前のめりになることもあります。強い発作が頻回に起こるわけではありませんが、走行中は神経を使います。後部座席ですと様子が分かりませんし、運転しながら後ろを振り返ってばかりもいられません。

座位をきちんと維持できているか、痰が絡んだときは吸引が必要かなどの判断や必要な対処も増え、それらはすべて「親」がやらなければなりません。

もうナースコールは無いのですから。

【家に着いた】

病院から自宅までは車で15分程度なのでドライブを楽しむまもなく到着、息子にとっては7ヶ月ぶりの我が家です。

それまで毎日当たり前のように生活していた我が家なのに、突然の入院をどのように感じていたでしょう。意識不明となる大けが、何故一人で病院にいるのか、この先どうなるかも全く理解できなかったと思います。

会話によるコミュニケーションはできませんが、再び家で親と一緒に暮らすことができることは嬉しく感じたのではないかと。

早速、車→車椅子→ベッドへの移乗、吸引準備、経管栄養準備、オムツ確認など、慌ただしい在宅介護がスタートしました。

【訪問医療チームによる退院確認と初診】

家に帰ってお昼の吸引や経管栄養を終えて間もなく、訪問診療(さくらクリニック)Y院長と看護師Sさん、医療相談員Kさんの3名、訪問看護ステーションからは看護師Kさんがお見えになりました。Y院長は退院前カンファレンスで一度お会いしていましたが、実際に訪問の「医師」と「患者」としてお会いするのは初めて(いわゆる「初診」)になります。

息子の体調や意識の確認を終え、これからこの医療チームがどの様に医療支援を進めて行くか、併せて家族との役割分担をどのように行っていくかなどを改めて確認しました。

また、訪問看護師Kさんには医療器具の設置場所や操作方法、薬や必要な物品なども確認していただきました。

・当面の役割

訪問診療(クリニック):健康・意識状態全般の確認、カニューレ交換、栄養管理等
訪問看護ステーション:看護:バイタルその他必要な観察、服薬確認、清拭・洗髪等
リハビリ:PT(筋力の回復)、ST(口腔体操)

家族:吸引、経管栄養、着替え、整容、排泄、服薬、健康管理

【家族介護(ルーチン)は即スタート!】

最初は不安しかありませんでしたが、とにかく慣れることでミスを防ぐようにするしかありません。

肝心な「吸引」と「経管栄養」は、入院中に指導を受け、それなりに経験もしてきました。

しかし「吸引」は相当な回数を経験しないと、良いタイミングで安全に、かつ、ほどよく痰を引くことができません。「これでいい」とか「これで良かった」と言ってくださる人はいないのです。日中、深夜容赦なく「痰」が絡んでくるので、親はちょっとした音や咳き込みで反応してしまい「神経過敏」や「睡眠不足」になりますが、回を重ねるに従って要領よくできるようになるはずです。

その日の終わり頃になるともうぐったりで「何事も起こらなくて良かった」と思いたいところですが、ただ時間が過ぎるだけではもったいない、少しでも有意義に時間を使わなければと反省しきりです。

体調が安定し、回復が進んでくると必要なケアの内容も減ってきますし、心と時間に余裕ができてきます。だからといって油断はできません。少しでも違う症状が出るたびにあたふたしてしまいます。

 

以下は家族が行う医療的ケア(主なもの)です。

1 バイタルチェック

・体温、血中酸素濃度、脈拍数の確認、必要に応じて血圧測定

2 吸入・吸引

・気切部からの吸入

・カニューレのサイドチューブから吸引、内筒洗浄、カフ圧の確認

・カニューレからの吸引、カニューレ内筒洗浄

3 経管栄養

・半固形栄養剤2パック注入

・投薬(錠剤のものは細かく砕き、水又はお湯に溶かしてシリンジで注入)

・ロ腔ケア(吸引歯ブラシ。仕上げにマウスウォッシュで拭う。)

4 衛生管理

・気管切開部、胃ろう部周辺を洗浄面で吹き、薬剤塗布後、新しいYガーゼで保護

・トラキマスク、保持ベルト交換

・体を拭く。(洗髪は、訪問看護師がベッド上で実施)

5 就寝時

・夜中は呼吸音、吹き出し等により吸引。(概ね2時間に1回やっていました)

・人工鼻はあっという間に痰が詰まるので使用できなかった。代わりにトラキマスクをつけたまま寝ることに。←入院中と同じです。

【さあ、明日から訪問医療が始まるよ!】

退院当日の訪問医療との「初顔合わせ」でしたが、本格的なルーチンとしてスタートするのは、看護・リハビリが翌日から、診療(クリニック)は翌々日からとなりました。



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