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【9月30日さくらクリニック第14回ALS合同勉強会】レポート②

【9月30日さくらクリニック第14回ALS合同勉強会】レポート②



前回の勉強会レポートはご覧いただけたでしょうか?

今回も佐々木が筆を執らせていただきました。

ご要望がありました勉強会の一部資料を抜粋して、ALSの病態と症状についてご説明したいと思います。

ALSとは?

ALSは、Amyotrophic Lateral Sclerosisの頭文字をとった略称です。筋萎縮性側索硬化症ともいわれています。

▼▼▼

運動機能の低下
(呼吸、嚥下機能の低下)

神経が進行的に障害され、呼吸筋麻痺にて死亡する難治性疾患である。
・日本では2020年10,514人が難病申請されており、毎年約3000人診断されている。(難病情報センター)
・根本的な治療な治療がなく、治療は患者様の「生活の質 quality of life, QOL」の維持・向上を目指して行なわれる。1)2)
・日本人のALSの場合、発症からの生存期間の中央値は4年だが3)、 2年未満の例もあり、急速に進行する症状に対応する必要性がある。

1)Miller RG, Jackson CE, Kasarskis EJ, et al. Neurology 2009;73:1227-1233. 2)Connolly S, Galvin M, Hardiman O. Lancet Neurol 2015;14:435-442.
3)Watanabe H, Atsuta N, Nakamura R, et al. Amyotroph Lateral Scler Frontotemopral Degener 2015;16:230-236.

ALSの症状は?

ALSの症状は大きく4つに分かれます。またそれに対する対応方法は、主に以下のようなものがあります。あくまでも一例になります。

致命的になるものは、呼吸障害と栄養障害です。

肺活量が減っていくと、体の中に二酸化炭素がたまっていき、病状の進行と相まって最終的には呼吸不全に陥ります。終末期の選択として、ご本人・ご家族の意思が明確であれば、早期のマスク換気(非侵襲的陽圧換気両方に当たります。)、マスクの装着時間が1日中になってきたり、呼吸苦の出現、喀痰量の増加、マスク装着による皮膚トラブル等その他様々な要因も考慮し、気管切開も考慮します。

一方、栄養障害は、CVポートを使用した栄養管理も検討されますが、感染の観点からは胃婁が望ましく、体重が10%低下してきて、ご本人・ご家族のご希望があれば、胃婁の増設を考慮します。ただ、栄養状態が悪くなってきている場合は傷の治りが悪くなったり、呼吸状態の悪化によっては造設事態が困難です。

早期からの説明、ご本人・療養を支えるご家族の意思を確認していくことが大切です。

ALSは進行性の神経難病です。思考能力が正常であった場合でも、病状が進むにつれて意思伝達能力を失ってしまう現状があります。その状態を俗に「閉じ込め症候群」といいます。眼球の動きは比較的保たれるためYES/NOの質問には答えることができます。自由回答式の会話は難しくなってきます。
また、ALSとして症状が出づらいとされる眼球運動障害も最終的には垂直線の動きを中心に眼球運動が障害されることがあります。そうすると閉じ込め症候群の名前の通り客観的にも意思疎通が難しいことから、意思表示か可能なときにご本人の希望を聞いていくことが大切です。

また、ALSのケアの上で重要になってくることは、ALSの10~75%がなんらかの認知症を発症します。ほとんどが前頭側頭型認知症です。その症状としては、温厚だった方が怒りっぽくなったりなどの人格変化や意欲低下、万引きを繰り返すなどの問題行動がみられます。

罹患率の頻度に幅があるのは、認知症の発症時期やALSの進行によりコミュニケーションが障害され、問診が困難になるためです。そのため通常の問診とは異なり、ご家族やパートナーの方に問診をするという手法もあります。ただ早期の認知症のスクリーニングがご本人の意思決定に寄与しているという証拠もないといういけんもあるため診断は慎重に進める必要があります。認知症の診断は必須ではないですが、対照的に薬を使う根拠にはなるため、もし前より怒りっぽくなったなど何かあれば医療者へご相談をしてください。

おわりに

簡単ではありますが、少しでも皆様のご理解になれば幸いです。今回発表いただいた、ケアマネージャーの森様の資料を一部抜粋して掲載させていただき、終わりとさせていただきます。ありがとうございました。

 



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