🌸魔法のステテコ🌸
🌸魔法のステテコ🌸
2025年04月08日

さくらクリニック練馬 院長の佐藤です。
今回は 山村ヒガシ氏 久しぶりの投稿です。
ヒガシ氏の諸事情(と私がモタモタしていたせい)で、だいぶん間があいてしまいました。
この間 色々な出来事がありました。。。 それは時系列に沿って順次お伝えさせていただきます。
今回は「軽いけれど中々治らない褥瘡を魔法のステテコで治したお話」です。
お尻に褥瘡
どういうわけか進行が大変ゆっくりな私。
何年経っても座位が保てているので、トイレ、入浴、リハビリでベッド、車椅子のリクライニングで休憩(2時間ほど)、それ以外は朝から晩まで椅子に座って生活している。
椅子というのはあれだ、ALSの人がよく使ってるスイッチひとつで昇降する青いあれ。
(*注:青色とは限りません)
あれねぇ、物凄く便利なんよ。あれは私にピッタリ!
そんな長年ALSをやってる私、椅子に長時間座ってる生活を続けていると、だんだんお尻が痛くなって来てしまったさ。仕方なく主治医に診てもらったら、赤くただれていて、「このまま放置してたら褥瘡(じょくそう)になるかもしれない」って。こりゃ大変だ。
主治医によると原因として考えられるのは、お尻の筋肉が落ちて長時間の座位に耐えられなくなったのでは? ということだった。
は~ん、まさにその通りだと思うよ。だって一般の人は座り疲れたら立ったり歩いたりすればいいけど、私はそうもいかない。ヘルパーさんがいれば立つことはできるが、一人の時間が最大3時間ある。
主治医曰く、「対策としては座ってる時間をとにかく減らすことかな。例えば1時間に一回立ち上がるだけでも結構な除圧になると思うよ」
でも、立ち上がるには介助が要る。ひとりでいる時間は減らしたくない。なんてったって自由時間だしリフレッシュタイムだからね。はぁ~、困ったな。
保護フィルムで上手くいくかと思いきや
とりあえず主治医から透明の保護フィルムというものをもらった。
(*注:サージンフィルムというやつです)
何やらこれを貼っておくと、外部からの直接的刺激が軽減されるので傷の治りが早いらしい。そして「貼ったらずっと貼っておいて。自然にはがれるまで はがさないでね」と。
へぇ~、こんなのがあんだねぇ。でもそんなにうまくいくんかいなぁ。さっそく貼ってみて数分過ごしてみたのだが、私は「おっ、これは!」って思った。
「ちょっとちょっと、何よこれ。いや~、痛くないよ~」
ああ、心の声が叫んで⋯⋯言いたいよ言いたいよ! 私は言いたいよ! 声を大にして「痛くない」って言いたいよ! でもしゃべれないから言えないよ! 誰かに文字盤じゃなくて直接声で伝えたかったのに、はぁ~あ、残念だぜ。
でもだ、物事はそこまで簡単じゃないというのが世の常である。翌日、どうもお尻が痛いなぁと思って、ステテコを履き替える時に見てみると、「ああ、丸まってますねぇ」とヘルパーさん。ありゃりゃ、そら痛いに決まってる。
原因として思い当たることがある。長く椅子に座っていると、除圧のために座り位置を自力で浅くすることが結構ある。どうやらその時の摩擦でフィルムが丸まってしまうようだ。3日平気な時もあれば1日でダメな時もあってマジでバラバラ。
むむ、どうしたもんかな。とりあえずフィルムを貼ってれば痛くないことが分かったからこれは継続で、あとは何か考えよう。
スライディングパンツ作戦
私はふと思った。排便後にリハパン(リハビリパンツ)を履くことがあるけど、履いてる時は痛みが少し軽減してるよなぁ。もしかしてリハパンのクッション性か? う~ん、でも毎日リハパンはヤダからなぁ⋯⋯ん? あっ! スラパンだ!
「おおっ! イケんじゃね!」
再び心の声が叫んだ。スラパン(スライディングパンツ)とは野球のユニフォームの中に履くパンツで、お尻からもも裏にかけて厚くなっていて、スライディング時に衝撃を和らげる効果がある。ひひひっ、ちょっとさぁ、スラパンなんか思いついちゃって、天才じゃねーの私って。これできっと!
すぐにネットで検索してみたのだが、私は「むむむ、これは⋯⋯」と思ってしまったじゃないか。なんていうか、スタイリッシュでカッコよく、洗練されたデザインだ。素材はほぼポリエステル、私が高校の時は綿100%だったからね。色も豊富、私の時は白だけ。はぁ~、時代が変わったんだねぇ。とりあえず私のイメージと違う。スラパンは却下。
私は再びふと思った。そういえば自力で座り位置を浅くする時に、ステテコのしわで痛いことがあるんだよね。生地が結構ごわごわだからな。ん? もしかすると肌ざわり? クッション性じゃなくて肌ざわり? 生地か! ステテコの生地か! よーし、もっと柔らかくてすべすべで、肌に負担がかからなそうなステテコを探してみるか。
そして魔法のステテコに出会う
私はネットに向かった。しばらく検索していると、「はっ!」っと思わせるようなものを発見した。シルク&コットンステテコ。てことは絹と綿か。
私は商品をクリックしてみた。高っ! 6000円もすんの!
でも書いてあるよ、『一度着たら肌が忘れられない心地良さ』って。このステテコはどうだろうか。そうだ、ヘルパーさんに聞いてみよ。
「6000円! はぁ、高い⋯⋯そうですね、高いですけど、これは良いような気がします」
よし、ひとつ買ってみるか。私はさっそく注文した、白と黒しかないから黒を。
これでお尻の痛みがなくなるなら6000円なんて全然高くない。でも期待し過ぎるとダメだった時のショックが大きいから、ちょっとだけ期待して配達日を待つことにした。そして数日後、ついにシルク&コットンステテコが届いた。
ほう、スゲーすべすべ。これは生地が薄くて1枚だと履けないな。とりあえずユニクロのステテコと2枚重ねで履いてみるか。
「な、な、なんじゃこりゃ~。超肌に優しい。ごわごわ感が全くない。ああ、気持ちいい~」
またもや心の声が叫んだ。まさに『一度着たら肌が忘れられない心地良さ』だよ。これ履いちゃったらユニクロのステテコに戻れねえじゃん。
欲しい、お尻が治らなくても欲しい。
ということであと4枚注文して、シルク&コットンステテコに30000円もかけてしまった私。フフフッ。
効果抜群!
1ヵ月ほどが経った頃、ヘルパーさんが何気なく聞いてきた。
「最近お尻が痛いって言わないですけど、治ったんですか?」
お、そういえば言ってない。このステテコと保護フィルムを併用して使ってたら何となく調子が良くて、しかもステテコを変えたらフィルムの丸まりが減ったんだよね。いつの間にかあれよあれよと⋯⋯まあそんな感じ。次の往診で診てもらうことにしよう。
「すごーい! 治ってるよ、何にもない。すごいね、ステテコ変えただけでしょ。
さすがシルク、さすが6000円、これは魔法のステテコだね」
おおっ! 最高~っ! まさか完全に治ってるとは。魔法だよ、魔法のステテコだよ。ドラクエでいえばホイミ、いやベホイミ、いや、完治だからベホマだな。
シルク&コットンステテコ、すげえ。
1枚6000円なんて全然痛くない。
ちなみにステテコを変えてから1年以上経ったが、お尻が痛くなったことは一度もない。みなさん、どうやら魔法は存在するようですよ。
山村 ヒガシ
主治医コメント
いかがでしたか?
ちょっと付け加えますが、山村氏の褥瘡は、寝たきりの方の好発部位(仙骨部が多い)とは違う場所です。
ご本人も仰っていますが「長時間同じ姿勢で座っている」ことで同じ場所に圧がかかってしまうのが原因で、場所は臀裂(お尻の割れ目)の近く。
平坦ではないこと、体交時などにどうしても皮膚が引っ張られてしまうこと等から、保護フィルムを貼っても剝がれやすいのです。
どうしたものかと思案していたところ、山村氏が大枚はたいて魔法のステテコを爆買いしてくれたことで、見事に完治した次第。
同じような悩みを抱えている方、お金に余裕があれば試してみてください。
(ただし物価高騰の昨今、山村氏が購入した時より少し高くなっています。。。)