さくらクリニック

そうですね、すごく大きなきっかけがあった訳ではないですが、ずっと総合病院の神経内科医として勤務していた中で、難病の診断はするけれど急性期しか診られない、通院できなくなったその先も長期的に診てみたいという関心がありました。

探していた頃「自宅の近所で、神経内科で、在宅医療」という条件を満たすところが、さくらクリックしかなく、タイミングが合ったということと、院長が神経内科医で、お話をお聞きすると実際に神経難病の患者さんをたくさん診ているということが分かり、今までの病院とは違った経験ができるところに魅力を感じました。

神経内科の病気は「完治できる病気がほとんどない」ので、おうちでの生活をどうやっていくかを考えていくことが診療のメインになっていく点は病院でも在宅でも変わらない部分ですが、在宅医療だと、おうちでの実際の様子を見て手助けできるという点に違いを感じました。

また、在宅医療を始めて分かったことは「思った以上に在宅でも色々できる」ということ。医療依存度が高い方、高齢のご夫婦、独居の方でも色々な社会資源を使って支えていけるんだな、ということは病院にいた頃は知らなかったです。病院では「これは自宅での生活は無理」「これは療養型だよね」という発言が非常に多いんですけど、在宅でも思った以上に意外とできるんですよね。

ちなみに神経内科医になりたいと思ったのは、長くお付き合いをしていく病気を診たい、病気の人を支えていきたいという考えがあって、それが在宅医療ととても親和性があって、自分に向いていると思います。

在宅医療の場合、外来と違って、診察の時間に雑談が入ってきます。2年前に第一子の出産産休を経てからは、育児や子供の話も話題に上がるようになって、雑談の幅が広がったというのはあります。

仕事と育児の両立は大変ですが、夫や夫の実家の協力もあって恵まれた環境で、好き勝手に仕事をさせてもらっているというところもあるので、ワンオペでフルタイムで頑張っている方と比べるとぜいたくは言えません。

主治医制であることはすごく良いなと思います。非常勤だと複数の医師によるグループ診療のクリニックも多く、毎週行く患者さんが違っているという話もよく聞きますが、「長くお付き合いをしていく病気の方を支えたい」という気持ちがあるので、それはスポット的な付き合いでは難しく、一人の患者さんを継続的に診て信頼関係を築いてからできる話なので、そういう面でとても良いシステムです。患者さんも相談しやすくなるのかなと思います。

ただし主治医制と言っても、自分が出勤していない日や週末は当番の先生が診てくださったり、内勤のスタッフがサポートしてくれる体制がありますし、迷った時はすぐに経験のある医師に相談できる環境も非常に大きいかなと思います。

またMSWが常駐しているというのもすごく大きいと思います。入院や受診の調整、難病医療制度のことなどを熟知したスタッフが診療をバックアップしてくれるのは、とても心強く、助かります。

在宅医療を経験すると、選択肢が増えるだけでなく、医師としての幅が広がると思うので、急性期医療をやっている先生たちに経験して欲しいです。

今、病院から在宅へ戻そうという動きが強化されて、昔より自宅で過ごす患者さんが増えていると思いますが、その先で何ができるのか、どんな生活を送っていらっしゃるのかを考えることが医者に求められていて、それは一度経験したことがあるか、現場を見たことがあるかないかで全然違ってくると思うんですね。そういう意味で、さくらクリニックのようにしっかりやっているところで、ぜひ一度、経験を積んでみてください、と言いたいです。

昔は、急性期医療から在宅医療に行くと、あとはずっと在宅医療に従事というようなイメージがありましたが、さくらクリニックのように体制が整っているところであれば非常勤でも良質の経験が積めますし、急性期医療に役立つこともたくさん学べます。在宅での難病の症例がこんなに集まっている所もなかなかないのかなと思いますので、経験を積みたい先生方にぜひおすすめします。