Homeイベント参加レポート > 【2025.5.30勉強会 参加レポート 前半】在宅療養の現実と希望(家族の声)その2

【2025.5.30勉強会 参加レポート 前半】在宅療養の現実と希望(家族の声)その2

【2025.5.30勉強会 参加レポート 前半】在宅療養の現実と希望(家族の声)その2

デフォルト画像

 

3 家族の困りごと(痰の状態)

気管切開から卒業できず、毎日数回の吸引を行っています。
痰がかなり多く、誤嚥も多いので吸引は必須ですが、問題はその「痰」がどういう状態かを医療者の方々に分かってもらえないような気がします。

例えば、「多い」や「固い」という指標があったとして、目の前で同時に評価できるなら一致した理解が得られ、これにより吸引回数を増やしたり、吸入やタッピングの判断や、感染症リスク対策などの情報共有ができます。

ところが、家族が吸引するときはそばに医療者がいることは無く、特に深夜の吸引となると「引くべきか」「引かざるべきか」と寝不足と不安が朝まで続きます。

また、関係者が多い(訪問クリニックや訪問看護ステーションの看護師さん、通所施設の看護師さんなど)と、目の前で吸引しない限り、「多・普通・少」や「固・普通・柔」などの記録ではアンマッチが生じます。

我が家の「普通」は、実は医療者の皆さんにお聞きすると「アラートレベル」の量と思う方が大半で、だからといって「かなり多い」、「かなり固い」の「かなり」を説明することができません。

教科書的な指標は全く参考になりません。普通とか平均とかも全く当てにならないと思います。

そこで在宅素人ながら、もう少しみんなのイメージが一致できそうな評価基準ということで、痰の感触を食材でイメージできないかと訪問看護師さんに協力を終えお願いし、実験をしてみました。

食材で選んだのは、メーカーや商品によっては微妙な違いがあるもののマヨネーズやケチャップ、卵白、ラコール栄養剤など10種類の食材を看護師さんに一つずつ吸引してもらいました。

どうしても吸引する人の主観の評価になりますが、食材の見た目、吸い込むスピード、音、などを動画で見てもらい、実際に吸引している時の痰に近いものを選んでもらうようにしました。固めの順番から、マヨネーズ、ケチャップ、コーヒーゼリーの3つを上げていますが、最近は吸引チューブ内で止まってしまうぐらい「超固い」痰もあり、もう一つ「お餅みたい」というランクを作りました。

4 呼吸状態の確認、排痰促進など

血中酸素濃度の計測や、肺雑音を聞き取るための聴診ではきちんと呼吸をしてくれないと評価ができません。いつもどおりにしてくれればいいのですが、息子は「よし、できるだけひっそり呼吸しよう」、「なるべく息を止めておこう」というのがマナーだと思っているようでなかなか判定できません。

サチュレーションは、指の分離手術の際に植皮したことでモニターが血中酸素を上手く拾えません。一方、聴診では肺や気管にかなりの痰を抱えていて空気の通りが悪いのに、ひっそりと静まりかえっているので「雑は無い」と思い込んだりもします。

排痰促進のために、背中、胸のタッピングや畳の上でゴロゴロと体位変換させたりしますが、もっと楽しく効率的・効果的にできるのはないかを介入スタッフさんに相談しました。

そこで出てきた2つのアイディア

【バランスボールにチャレンジ】

リハビリ科のフォローアップ評価をしていただいている医師から、足の筋力強化や股関節のストレッチにバランスボールが良いと勧めていただきました。早速ネット通販で45cmのものを購入し、OTさんとPTさんに指導をお願いしました。

恐る恐る始めた割に、以外と楽しいんだと理解したのか、その後65cm、75cmのボールにも座れるようになりました。今後の看護・リハビリ計画策定としてステーションの皆さんが考えてくださり、「バランスボールやりながら APT.(アパトゥ)」がいいんじゃないかと案がまとまりました。

3つのポイント
・体幹バランスの向上、股関節のストレッチ
・呼吸機能の改善・排痰促進
・リズム感(インテンポ)の向上、ジャンプしながら手拍子、かけ声(発声練習)

【吹き矢やシャボンアートにチャレンジ】

聴診で、深呼吸「ふー」ってやってごらんと言うと、思いっきり「フー」や「プー」と声を出します。声じゃなく「息」と言っても、言葉の理解ができません。そこでティッシュやシャボンリングを使って吹かせ、ある程度「息」が目に見える形での練習にしました。

また、長い息「ふー」と短い息「フッ」の違いを分からせるために、100均グッズで吹き矢を自作、さらには合同勉強会に向けてシャボンアートにも挑戦しました。

 

5 6年間の在宅療養を経験してみて

体調が順調に回復し、安定とはいかず、「山あり、谷×2あり、渓谷も×3あり」の毎日です。ゆっくりしていられる日常とはほど遠いですが、在宅支援チームの皆様のご支援により、回復に加えて「小さな成長」も見られます。

特に、息子はチームの皆様の訪問をとても楽しみにしており、また、親身に接してくださる皆さんの温かさに心が救われます。

親なき後までのカウントダウンは止まらないどころか加速しはじめていますが、できるだけ笑顔で楽しく安全運転に努めて参りたいと思っています。

 

訪問看護ステーションリカバリー
看護師Gさんのコメント

現在、リカバリー看護師が介入している週3回のうち2回を私が担当しています。

訪問の様子は、お父様が作成された動画のように、訪問スタッフと患者様、ご両親様との楽しい関わり(支えあい ともに歩む)を皆様にも見ていただけたと思いますが、行くたび、行くたびに息子さん(患者)の笑顔と、ご両親様が私たちを優しく受け入れてくださるところが本当に素敵なご家庭だと思っています。

中でも、私たちスタッフとご両親様が一緒になって息子さんを見ていることをとても感じていますし、私たちからご提案することもあれば、お父様やお母様からこういうのがいいのではとご提案いただくこともあり、それが私自身にとってもすごく勉強になっています。

今後も、また、他のご利用者様やご家族様も含めて、患者様ご本人だけでなく、ご家族様とご一緒に在宅医療や在宅支援を頑張っていけたらと改めて今日感じました。

 



関連記事一覧





Copyright © さくらクリニック All Rights Reserved.