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【2025.5.30勉強会 参加レポート 前半】在宅療養の現実と希望(家族の声)その1
【2025.5.30勉強会 参加レポート 前半】在宅療養の現実と希望(家族の声)その1
2025年10月15日

– さくらクリニックからのコメント –
当日、司会を担当したIと申します。
今回は、当院が在宅医療の支援させていただいている重度障害の患者様ご家族様にご登壇をお願い致しました。
司会という立場であるため、役割を全うするために集中しつつも、自然と耳はご家族様のお話を聞き入ってしまうほど当事者の方からのお言葉は響くものがあり、貴重なお時間でした。在宅だからこそできることがある、感じられる喜びがある、また支援チームの存在があってこそ前向きな在宅療養が行えていることを強く感じました。
勉強会当日は時間に限りがあり当院としても申し訳ないお気持ちでしたが、当日伝えきれなかったお話をこのように文章でまとめていただき、感謝申し上げます。
ぜひ皆様、ご一読いただけますと幸いです。
今後も当院として患者様、そしてご家族様へより良いサービスを提供し、信頼が見える関係性を築いていけるよう精進してまいります。
勉強会当日、在宅患者(重度障害者)の父(スピーカー)として参加させていただきました。
現役時代は普通のサラリーマンで、退職後は在宅での息子の介護が生きがいになっています。
医療従事者ではなく、「我が家のこと」しかお話できませんが、せっかくの機会をいただき、自分たちの在宅療養を振り返る良い機会となりました。
ここでは、もう少しお伝えしたかったことや感じたことを報告させていただきたいと思います。
【発表テーマ(お題)】
さくらクリニックから、「5月の合同勉強会で“障害児者の在宅療養”をテーマに考えている。さくらは神経難病が専門に思われているところもあるが、実は障害児者の患者も多い。そこで勉強会では初めてとなる「障害児者の在宅」をテーマに取り上げ、ご家族の立場から少し話をして欲しい。」というお題をいただきました。
具体的には次の内容で、
前半:在宅療養の実際(20分程度)
後半:家族の負担軽減と将来の問題(5分程度)
どちらもテーマが大き過ぎます。「障害児者+家族+在宅療養」という僅か10文字の漢字で語れる内容ではありません。
そこで、我が家では日常生活にケアがどう組み込まれ、家族の役割、支えてくださる在宅ケアスタッフさんとの協働、在宅への思いについてお伝えできればと考えました。
【患者プロフは配付資料で】
勉強会は難病の症例研究ではなく、先天性障害のある息子が転倒し、脳挫傷により在宅療養が必要となったという「患者・家族の日常」を紹介する企画なので、在宅療養となる前(0歳~28歳まで)は簡単なプロフを配付し、壇上では、「在宅で良かったと思うこと」や「リハビリの様子」をお話することにしました。
★在宅で良かったと思うこと:在宅チーム皆様のご尽力により、
①身体機能の維持・回復が実現できている
②予想していなかった成長が見られた
③チームみんなで喜びを分かち合ってくださる
④それが患者・家族の嬉しい支えになっている
①身体機能の維持・回復が実現できている
②予想していなかった成長が見られた
③チームみんなで喜びを分かち合ってくださる
④それが患者・家族の嬉しい支えになっている
【何を話すか】
勉強会参加者(聴講者)は、在宅の現場で日々活躍されている看護師さん、セラピストさん、ケアマネージャーさんなどのほか施設関係者や研究職の方もいらっしゃいました。
皆さんたくさんの事例をご存じなので、我が家のような家族が大上段に振りかぶっても、「そんなことは知っている」、「そんな話は必要ない」と、聞き手ニーズとのミスマッチが起こってしまいます。家族の話はあくまで「小さな一事例」でしかないので、とても切り口が難しいと思います。
20分の時間を、しらけた話や重い話にならないようにしたい。伝えたいことはたくさんあります。でも、ただでさえ早口な私が、2度と無さそうな機会でご迷惑をおかけできないので、パワーポイントを活用し、イラストやリハビリの様子を撮影した動画も組み入れ、なんとか「在宅支援チームのチカラにより、在宅だからできる!、在宅を楽しく!」というストーリー仕立てにできたと思います。
【最初は何もかも手探り】
回復期では、1日3時間のリハビリで基礎体力の回復、衰えた可動域の改善、日常生活に復帰するためのトレーニングを5か月間行っていました。疾患の内容により入院期間は異なりますが、退院したからといって必ずしも自宅に戻れるとは限らず回復状況によっては再び急性期に出戻りしたり、長期療養のための病院や施設に移る患者さんもいます。
家に帰っても、すぐに元の生活に戻れる訳でもなく、その一方で入院中に身に付けた生活動作をそのまま家に持ち込めません。
家族が行う患者ケア、日常生活への影響など、家族だけでは対応が困難ですが、患者と24時間向き合っている家族だからできることも多いと思います。ほとんどの場合「在宅療養は初めて」なので、医療・福祉制度が利用できるか、患者・家族のニーズに合う支援チームと出会えるかなど大きな悩みや不安、時間との闘いです。
【入院中に解決できなかった課題】
回復期退院時までに解決(回復)できなかったいくつかの課題のうち、勉強会で報告した「在宅支援チームのチカラで解決・改善できていった事例」を中心にご紹介します。
1 食べるよ(禁食からの脱却)
在宅での食上げは、支援体制をいかに確保できるかが大きなポイントで、これはさくらクリニックさんに「チーム食上げ」を編成していただきました。
当初、歯科病院に訪問を依頼し在宅でVE検査にトライしましたが、息子は鼻からの内視鏡挿入に徹底抗戦で1mmも入りませんでした。そこで次の策としてVF検査を病院外来で行うこととなり、開始からほぼ半年で口から食べられるようになりました。
さくらクリニックホームページ内の利用者ブログにどう取り組んでいったかなどについて投稿しておりますのでそちらもご覧頂ければ幸いです。
あわせて読みたい
支えあい ともに歩む ~回復と成長の記録~ 第2章 2 食べるよ!
https://sakura-cli.jp/nakano/sakura-hiroba/meeting/
さくらクリニック合同勉強会のお知らせ
神経難病の患者さんの嚥下障害について在宅医療機関が連携し、「食べる」をどのように支えているのかの合同勉強会を開催します。
日 時:令和7年10月24日(金) 19:00~21:00
(開場18:40・講演19:00~20:35)
場 所:練馬区立区民・産業プラザ ココネリ研修室1
テーマ:神経難病の「食べる」を支える
~さくらクリニックと訪問歯科の日々の診療より~
2 お風呂入るよ(入浴の実現)
回復期入院中は、最後までストレッチャー利用の機械浴(週2回)でした。自宅は浴室が狭くそのような対応ができません。そこで、最初はベッド上で清拭とケリーパットでの洗髪からスタートしました。お湯の確保や排水処理も大変ですし、息子はベッドで洗髪されるのを歓迎してくれません。訪問入浴の利用も考えられましたが、なんとか浴室で入浴ができるようにならないかが淡い希望となっていました。
ところが、在宅開始からまもなく、看護師さんから「息子さん、車いすにしっかり座っていられるので、シャワーチェアも大丈夫かも知れません」と提案がありました。
気管切開しているし、足腰の筋力が弱っているのでどうすれば浴室を利用できるか分からなかったのですが、看護師さんの熱意と工夫を受けチャレンジすることとなりました。
在宅現場対応でのナースの底力!大きなトラブルも無く、退院から1か月ほどで湯船にも入れるようになりました。
訪問PTさんも介入していた時期だったので、跨ぎ動作をしっかり評価していただき、どう支えて、どう跨がせば良いかも教えていただくことができました。
それ以来、息子は気持ちよく湯船に入っています。看護師さんは難しい判断と細心の注意の元での実践を、それこそ「いまでしょ!」とやり遂げ、大感謝です。
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