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さくらクリニック練馬第二回勉強会「在宅で終末期を支える」その1

さくらクリニック練馬第二回勉強会「在宅で終末期を支える」その1



さくらクリニック練馬 院長の佐藤です。
勉強会当日の様子については 先日MSW鈴木がご報告させていただきました。
https://sakura-cli.jp/nerima/wp2019/archives/3595
その続編です。
いや、実は勉強会の本編です。
終末期、延命治療、尊厳死、ACP(Advanced Care Planning)・・・最近話題にされることの多いテーマです。
まずは言葉の定義について確認し、ご自宅での終末期の過ごし方について、今回は癌末期と認知症終末期を例に 解説していきたいと思います。
内容がてんこもりなので、何節かに分けていきますね。
その1は「終末期」と「延命治療」の意味するところについて 基本的知識の確認です。

■終末期ってなに?
一般的に「いかなる医療の効果も期待できず命が数か月以内と判断される次期」とされています。
(*期間については「3か月程度」とか「2週間から3か月程度」とされる場合もあります。)

下記は よく使われる「予後予測モデル」。
1.癌、2.心肺疾患、3.認知症・老衰 と3つのパターンを示しています。直感的にイメージがつかみやすいですよね。

しかし これは2003年に発表されたモデルです。
(Lynn J, et al. Living well at the end of life: Adapting health care to serious chronic illness in old age. Rand Health; 2003.p8. )
その後 医療状況は大きく変化し、終末期の在り様もこういう典型的なパターンとは異なってきました。

1.癌
昨年本庶佑先生が 癌免疫治療薬オプジーボでノーベル賞を受賞されましたよね。
手術が難しい癌でも、新しい治療薬がどんどん出てきます。根治に至らなくても、ある程度の生活の質を維持しながら癌と共存してゆくことが可能になってきました。

2.心・肺疾患
かなり重症の方でも、自宅で在宅酸素や非侵襲式呼吸器を使いながら療養することが可能となっています。
参)自宅でできる呼吸障害の治療法
詳しく知りたい方は 見てね。

3.認知症・老衰
食べれなくなったら胃瘻からの経管栄養、痰を自力で出せなくなったら吸引機を導入すれば、ご自宅でも長期間にわたる延命が可能です。
参)口からご飯が食べれなくなったら・・・その1
詳しく知りたい方は 見てね。

いかがですか?
「いろんな方法があるのね」と安心した方も、「そこまでして生きたくないわ」と思った方もいらっしゃるでしょう。
どの治療法を選ぶかで、終末期の有り様はだいぶん変わってくるのです。選択の権利があるぶん、自分はどうしたいのか? を自分で考えて選ばなければなりません。

 延命治療ってなに?
「疾患の根治ではなく延命を目的とした治療」とされます。
命を延ばすための対症療法
例えば貧血に対する輸血、呼吸障害に対するHOTや呼吸器、嚥下障害に対する胃瘻や高カロリー輸液。

この「延命治療」という言葉、なんとなくネガティブな印象はありませんか?
在宅でも病棟でも、治療方針について話し合うとき、「延命治療はしないでください」とご本人やご家族が仰ることが結構あります。
その真意は、「たくさんの管につながれて ベッドに寝たきりで 意識も朦朧として(あるいはなくなって)、あるいは体の痛みや不快感を感じながら、ただ生きながらえるような治療は しないでください。」ということですよね。

そのお気持ちは当然受け止めるとして、
・癌末期の激しい痛みを緩和する
・呼吸不全の終末期、在宅酸素やモルヒネで呼吸苦を和らげる
こういうことも延命治療です。
辛い・苦しい症状を取り除き、楽にする延命治療なら、拒否する方はあまりいないでしょう。
「延命治療をしない」イコール「なにもしない」わけではないのです。

下は病気にかかった人が辿るプロセスのシェーマです。☟

・急性期
放置すると直ちに命の危険を招く状態です。最優先されるのは「命を救うこと」。急性期の集中治療が行われます。
「救命のため 最善を尽くす」という方針さえ決まれば、患者さんやご家族が口を出す余地はない、つまり治療方針について悩む必要はありません。
・回復期
徐々に安定してくる時期です。この時期に優先されるのは 病前の機能をできるだけ取り戻すこと。回復期のリハビリが行われます。
・生活期
病状は安定しています。この段階では身体機能と生活の質を保つことが大事。
・終末期
終末期で最優先されるのは「尊厳」とされています。
人生の最終段階です。今より病状も生活の質も、格段に上がることは考えにくい。
だから 残された大事な時間をどう過ごしたいか、大事なご家族にどう過ごしてほしいか、患者さん側が考え、決めていい(決めなければならない)のです。

☞その2は尊厳死の話からいきます






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