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「口からご飯が食べられなくなったら・・・」番外編

「口からご飯が食べられなくなったら・・・」番外編



院長の佐藤です。

さて、口からご飯を食べられなくなったら・・・、必要な栄養を補う手段は、
1.高カロリー輸液
2.経鼻胃管
3.胃瘻造設

では、ご飯が食べられなくなったらそのどれかを選ばなければならないのか?
勿論そんなことはありません。
末梢補液(いわゆる「点滴」)も、方法の一つです。
ただし漫然と続けてはダメ。目的を持って適切な使い方をしましょう。
そして、何もしない、も立派な選択肢です。

末梢補液(いわゆる「点滴」)

誤解されている方が結構多いですが、点滴のみでは栄養はとれません。 
「末梢」というのは、腕や足のこと。フツウの点滴です。
入れられるのは、水とミネラル、ビタミン類。
糖類、アミノ酸等、カロリーになるものは、ごく少量、気休め程度です。
したがって、
高熱、肺炎、嘔吐などで水を飲めなくなった時、脱水を防ぐために一時的に点滴をするのは適切な治療ですが、
ご高齢(いわゆる「老衰」)や癌末期、神経難病の嚥下障害のために口から食べられなくなった時、延々と点滴をするのは、お勧めできません。断食になってしまいます。

どんどんやせ細り、衰弱していく「延命治療」は、ご本人にとって喜ばしいものではありませんよね?

ご飯が食べられなくなった人に点滴をするのは絶対ダメか?

絶対ダメ、ということではありません。
点滴の効果と限界をしっかりと理解して、目的をもって使うなら、アリです。

人は、何も食べなくても水を飲んでいれば、2~3週間は生存可能と言われています。一方、水を全く飲まないとで3~4日で死んでしまう可能性があります。
「余命があと3~4日」をどう受け止めるか?
これは年齢、病気、ご本人の死生観、ご家族の気持ちにより、千差万別だと思います。
例えば
寝たきりで長らくご自宅で療養され、100歳を超えた方が、一日の大半を眠って過ごすようになり、食事を摂らなくなった。
→この場合はどうでしょう。
「点滴も何もしないで、静かに見守り、見送ってあげたい」と思うご家族が多いのではないでしょうか?

一方、例えば
・神経難病が進行し、食事も水も全く摂れなくなった。
・自分の人生観として、胃瘻や経鼻胃管で延命はしないと決めており、決意は固い。
という方が「まもなく息子の結婚式がある。それまでは何とか生きていたい。」、あるいは「もうすぐ誕生日。その日を家族みんなで祝いたい。」など明確な目的があるなら、最小限の点滴をして頑張る、のはアリでしょう。

難しいのは、ご家族が、患者さんの死を受け入れる心境になれない時です。
私は、かつて神経難病の末期の方に1か月間点滴をしたことがあります。
まさに断食。骨と皮にやせ細ってゆくのを見守りつつ、ご本人に申し訳ない、と内心悩みました。
でも、この1か月間は、ご家族が「大好きなパパ」を失うことを受け入れ、見送ってあげるのに必要な時間だったのだと、彼は愛する家族のために付き合ってくれたのだと、だんだん思えるようになりました。
1か月、まではいかなくても、ご家族が「頑張ってくれてありがとう。ご苦労様。静かに休んでください。」というお気持ちで見送ることができるまで、しばしの時間稼ぎで点滴をするのは、「無駄な延命」ではないと思っています。
ただし、静かに終わろうとしている命を、無理に引き延ばしていることは確かです。
付き合ってくださっている患者さんに感謝し、あまり無理強いをしないようにしましょうね。

さてさて、文字が多くなってしまったので、最後は恒例の「茂木さんちの壁紙アート」をどうぞ!



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