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利用者ブログ【第1章 1- リハビリ病院でやっていたこと】

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1 リハビリ病院でやっていたこと

リハビリ病院では、退院後に備え実践形式でいろいろ指導を受けました。
ただ、あくまで病院の設備、病院内でのやり方なので、そのままではできません。

【医療的ケア】

(1)痰の吸引
息子はとても痰が多く、止めども無く出ますので頻回な吸引が必要です。

①カフ上に溜まった唾液の吸引
カフ(空気で膨らますバルーンのようなもの)付きカニューレなので、カフ上に垂れ込んでくる唾液(入院中はほとんど禁食だったので誤嚥するものは唾液が大半でした。)をサイドチューブから吸引します。

このカフは時間の経過や体の動きなどで空気が抜け、また、膨らませていたつもりでも僅かな隙間から誤嚥しているものが気管に流れ込みます。逆に膨らませ過ぎると気管に炎症を起こしてしまうので患者に合うカフ圧の確認が必要になってきます。

②カニューレからの吸引
カニューレに吸引用カテーテル(チューブ)を挿入し吸引します。差し込む長さや吸引する時間の判断がとても難しいです。

なんと言っても、外からは見えない気管の中にカテーテルを差し込み、どこにあるか分からない「痰」を探りながら吸引していくので、気管内の組織にキズ(出血や肉芽の原因になります。)をつけてしまう可能性があります。

カテーテルに「メモリ」は付いていないのでどのぐらい挿入したか分かりません。

また、挿入している時間は1回10秒~15秒と言われていますが、時計を見る余裕は無く「直感」に頼ることになります。

入院中、複数の看護師さんから吸引の指導を受けましたが、看護師さんによって手技が違うので戸惑います。(3人いれば3人とも違ったり、どなたのやり方をお手本にすればいいのか..)

(2)経管栄養
手術後しばらく経鼻胃管経由で液体栄養剤を投与していましたが、経鼻胃管の入替えがうまくいかず「胃ろう」を造設することになり、半固形栄養剤を注入することになりました。

液体栄養剤はセットすれば、そばで付き添っていなくても1時間ぐらいで終わります。よく見る「点滴」のような感じです。

半固形栄養剤は患者さんの目の前で絞り器を使って注入します。(注入時間は1パック5~10分ぐらい。)

絞り器での注入は腕力勝負の「力仕事!」です。自分でやってみて分かったことは、栄養パックから胃までの接続チューブの長さが短いほど少ない力で済みます。

液体タイプは栄養剤を高く吊すので60cmのものが使われることが多いようですが、このままの長さで半固形栄養剤を注入しようとするとものすごい力が必要でプラスチック製の絞り器を何本も折ってしまいました。

液体栄養剤か半固形栄養剤かは患者さんの容態や年齢などによって医師が決定します。

半固形栄養剤のメリットは、口から食べるのと同じように消化されていくこと、短時間で必要な栄養を接種でき、食後の長い休憩を取らなくてもリハビリを始められることなどです

看護師が患者に近い位置で注入しますので、コミュニケーションを図りながら楽しいひとときを共有できます。

【入浴】

短期間の入院では病院内で「入浴」することはほとんど無いと思われます。

一方、長い入院生活となるリハビリ病院では「入浴」も機能回復メニュー「服を脱ぐ(着る)、体や髪を洗う、浴槽に入る(出る)、体を拭く、髪を乾かす。」の一つです。

それまで当たり前のようにできていた動作も、身体の機能や体調、意識が十分回復していない場合は危険です。

そのため、看護師さんや介護士さんの介助を受けながらの入浴になります。

息子は気管切開しているだけで無く、点滴していたことや、酸素吸入をしていたこともあります。

そのような時はベッド上での清拭に限られ、洗髪はできません。

・何ヶ月ぶりかのお風呂

看護師さんから「お風呂に入りますので着替えとタオル、シャンプーやボディソープを用意してください」との嬉しい連絡がありました。

この病院では気管切開患者の入浴は寝たままのストレッチャー式シャワー入浴(介護浴槽)に限られているようでした。

介護浴槽に入って、体の左右両側から介護士さんが体を洗ってくださり、看護師さんは気管切開部の保護や体調の変化を確認しながらしっかりシャンプーをしてくださいました。

時には入浴中に痰の吸引が必要になることもあり、すぐに対応できるよう浴室に小型の吸引器を持ち込んでいました。

入院患者さんの中には、見守りを受けながら一人で普通の湯船に入れる方(主に足を骨折された整形外科の患者さん)もいらっしゃいましたが、気管切開や酸素ボンベ利用の患者さん、頭部にかかわる病気やケガの患者さんは、介護浴槽やリフト式機械浴を利用するなど様々です。

お風呂から上がった患者さんは皆さん笑顔ですが、介助してくださるスタッフの皆さんは毎日とても重労働で大変だと思います。

患者数、それぞれの体調の状態、リハビリ時間の合間など入浴計画を立てながら週2回の入浴がやっとのようです。これらの入浴設備、介助者を確保できなければそのチャンスも無かったと思います。

【リハビリ】

この病院では、土日祝日、お正月休みも無く「365日」毎日リハビリがあります。

1回40~60分程度で、1日に3~4のコマ(1日の上限は合計3時間まで)が組まれています。

・理学療法士(PT):歩く、立ち上がる、座る、横になるなど

・作業療法士(OT):主に手作業や上肢の可動域拡大など

・言語聴覚士(ST):口腔体操、発音、嚥下、視覚的な認識など
気管切開しているので声は出ないけれど、口パクで発声練習を行います。

息子はもともとの障害によりコミュニケーションが成立しません。

そこでリハビリの時間はスタッフが戸惑うことが無いよう親が付き添い、「何がしたい」「どう感じている」など、また、日常の生活動作では「何ができていた」「何ができなかった」などを親が通訳(解説)します。

リハビリの様子を近くで見ていたので、回復の様子を知ることができ、空き時間は親子で自主トレーニングをすることもできました。

しかし、病院と自宅では環境が大きく異なります。病院のトイレはスライド式ドアで、中に入っても余裕があります。

家に帰れば全く違った生活動作になるので、せっかくのリハビリが無駄にならないようなトレーニングができるかが課題でした。



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