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利用者ブログ【第2章 2- 食べるよ!(その1):退院後の食事(経管栄養)】

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食べるよ!(その1):退院後の食事(経管栄養)

 

前回の寄稿「第2章 1- 訪問診療スタート(2023年4月11日)からあっという間に1年以上の日が過ぎてしまいました。もっとテンポ良く書き上げるつもりだったのにごめんなさい。

在宅スタートとなった当時は基本的な生活動作は全介助が必要で、さらに新たに増えた「医療的ケア」が日常ルーチンとなりました。慣れない医ケアで1日が始まり1日が終わるの繰り返しです。現在ではだいぶ回復したと言えますが、新たな症状も出現し山あり谷ありの毎日です。

 

【日々の食事】

退院時、「最初の1ヶ月は入院中と同じ栄養剤を注入するように」とリハ病院の主治医から指示がありました。生活リズムや環境が大きく変わるので食事に関しては病院で慣れた栄養剤を使う方が体の安定に有用とのことです。

しかし、病院で使っていた半固形栄養剤を入手しようと思っても、市中の薬局やドラッグストアでは購入できませんでした。このような栄養剤は病院や施設で使うための業務用のもので、個人向け販売がありません。そもそも個人向けでは無いことからネットで探しても販売価格は強気のようです。同じものを探しましたが1パック(400kcal)は500円近い価格でした。2パック(800kcal)で1,000円となり、同じ程度のカロリーであればコンビニのとんかつ弁当やチェーン店の牛丼の方が安いです。

もっとも栄養剤は栄養バランス満点のベストチョイスですが、食の楽しみを満たすことも無く淡々と終わってしまいます。

【個人で簡単に購入できる半固形栄養剤が無い】

最近は実店舗よりネット販売の方が便利に購入できる時代です。しかし、病院・施設向け商品や医療関係者限定のものは、例え患者だとしても一般個人で購入するのは困難です。ネット販売で個人購入が可能なものを見つけても、ロットが少ない小売りでは割高な金額設定になっています。また発注してすぐ届くわけでもありません。業務用なら流通ルートが整備されほぼリアルタイムで納品されると思いますが、いつ注文が入るかもわからないような個人向けは在庫管理もアバウトで、販売店によっては届くまでに1週間程度かかることもありました。早め早めの注文が必要ですが、納品が不安定のため家のストックがなくなる可能性も皆無ではありません。

半固形タイプ栄養剤を利用されている場合は、いざストックが無くなったときには家で調理したおかずやご飯をミキサー食として注入する方法、なんとか市中で手に入る介護用栄養剤、栄養ドリンクなどでも対応が可能かなどについて、事前に主治医とよく相談しておいた方が良いと思います。

【1日何食?】

入院中は1日4回に分けての注入でしたが、在宅の生活リズムでの4回は結構きついです。そのほかにも吸引や吸入、清拭、着替えやトイレなど昼夜問わず介助が必要で、家族は安心して眠ることもできません。

経管栄養そのものは「規則正しい時間」「決まった栄養剤」「決まった手順」で行い、準備、水分注入、栄養注入、投薬、片付けで1回の食事が終了します。

点滴タイプの栄養剤は栄養が流れている間(60~90分)は必ずしもそばにいなくても良いですが、半固形型のものは栄養を絞り器で絞るのですべてが終わるまでずっと付きっきりです。この「絞る」はかなりの力が必要でプラ製の絞り器を何本も折ってしまいましたが、市販されいないので毎回ヒヤヒヤです。もし折れてしまい、予備も無いときは栄養剤の中身だけをシリンジで注入することは可能ですが、これはこれで相当の力が必要です。

加圧パックも購入してみましたが思ったほどうまく使いこなせませんでした。

・入院中~在宅1ヶ月目:
1日4回(朝5:00、昼11:30、夕17:30、夜21:00で計2,000Kcal)
・在宅2ヶ月目~:
1日3回(朝8:00、昼12:00、夕18:00で各600kcalの計1,800kcal)

1日4回にすると朝と夜はまだ息子が寝ている最中に注入することになるので、在宅では普通の生活(1日3回の食事)に戻していく必要がありました。

そこで1ヶ月経過時点でクリニックと相談し、「①栄養剤は1パック当たり300kcalのラコールに変更」、「②1日3回各2パックで合計摂取カロリーを1,800kcal」でトライすることになりました。数字だけ見ると200Kcal減ることになり、30歳男子が基礎体力を維持するためのカロリー不足が心配でしたが、体調の安定が軌道に乗り始めているようで痩せることはありませんでした。住み慣れた自宅でのんびり過ごすことが休養・回復にプラスに働いたようです。

【満腹なの?】

口から食べられるなら、表情や食べるペースで「もっと食べたい」、「もういらない」がわかります。しかし、経管栄養ではいつも一定量を注入してしまうので、本人の食欲が有るのか無いのかわかりません。投薬も胃からの注入ですが、苦い薬や薬の量が多くても淡々と注入できます。液体の薬やOD錠はいいのですが、硬い薬を砕いて粉にするのは一苦労です。あらかじめ薬局で粉砕してもらうこともできますが薬の安定性が低下したり水に溶けない場合もありますので薬剤師さんに確認してもらうようにしてください。

なお、栄養注入後は痰が増えるので注意が必要です。消化が進まないうちに痰を気管から吸引しようとすると、その刺激で嘔気や嘔吐を生じさせ、逆流性食道炎を引き起こす可能性があります。注入直後は無理な吸引をせず、軽い排痰介助で痰を出しやすくしたり様子を見ながら少し時間をおいて吸引するなどが必要に思いました。

【息子の目線】

在宅移行後、まだ座位が難しいときはベッド上での経管栄養です。息子が次第に座位を維持できるようになるとリビングで過ごすようになり、経管栄養もその場で行うようになりました。

我が家のリビングとダイニングがつながっていてリビングのテレビを見ていてもちょっと振り向けばテーブルで食べている親が見えてしまいます。息子は気切で声を出せませんが、「僕のは?」との訴えが胸に突き刺さります。

そこで、親は見えないようキッチンで交替で食べるようにしました。立ったまま5分で食べられる簡単な食事。しかし毎日・毎食のことですので限界があります。

【胃ろう用接続チューブの長さなど】

急性期病院にて最初に造設したPEGはバンパー型のものでした。主に点滴タイプの栄養剤を投与するためのもので、栄養パックをポールに吊し60cmほどの接続チューブでPEGにつなぎます。栄養が流れるスピードは個人差はありますが1時間に約200ml程度(厚生労働省資料)です。1パック300kcalで300mlの場合は90分ぐらいかかる計算になります。そうなると2パック600Kcalでは3時間もかかってしまいます。

このバンパー型のPEGキットに標準で付属していたチューブは60cmのものだけでした。30cmのものは別売品として販売されているのですが、それを知ったのは退院から数ヶ月経過したときです。入院中お世話いただいた看護師さんたちもものすごく苦労されながら(何本も絞り器を折りながら)注入していましたが、30cmのものがあることは皆さん知らないようで話題にもなりませんでした。

一方、在宅で交換しているバルーン型PEGは主に半固形栄養剤が想定されているのか標準で付属していた接続チューブは30cmです。60cmが必要なら別売品で購入しなければなりません。

この60cmと30cm、液体栄養ならクレンメで速度調整ができますが、半固形のものは人の手で絞るので注入速度は腕力次第です。

息子の場合、胃ろう造設当初のバンパー型のもので退院したため最初の交換までの3ヶ月間は入院中と同じ60cmの接続チューブを使って注入していました。とにかく絞る力が必要で、2パック注入するときは握力がなくなるぐらいの作業です。

いずれのキットにも説明書が添付されていますが、基本医療従事者向けの説明となっており、「半固形栄養剤30cmなら力の無い家族でも楽に絞れる」などという説明はありません。そのあたりはわかりやすい説明があると助かると思います。

バンパー型は6ヶ月に1度の交換が必要ですが、バルーン型は1ヶ月に1度の交換です。バンパー型は在宅交換することが出来ず、その度外来診療で鎮静をかけて処置を行い、全部終わって病院を出るまでに2時間ほどかかりました。途中の移動時間や病院での待ち時間に吸引が必要になることもあるので吸引器持参です。

これに対しバルーン型の交換は月に一度、家のベッドに寝たまま鎮静をかけることもなく10分ほどで終わってしまいます。同時にカニューレ交換を行う場合でも二つ合わせて30分もあれば完了です。

バンパー型、バルーン型それぞれメリット、デメリットがあり、在宅でもバンパー型を使用されている患者さんもいらっしゃいます。我が家は一度PEGによる想定外のトラブルがありましたが、なんと言っても在宅で交換していただけることは患者・家族ともに負担が少なく大変助かっています。

 

さくらクリニック練馬分院のホームページに患者様の胃ろうの記事や経管栄養関連(絞り器)記事が投稿されています。

2023-05-25 山村ヒガシ氏エッセイ第6弾「地獄の胃瘻造設
https://sakura-cli.jp/nerima/archives/5281

2024-06-19 経管栄養のお助けアイテム紹介!
https://sakura-cli.jp/nerima/archives/5678



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