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痙性麻痺にボトックス治療が効きます

痙性麻痺にボトックス治療が効きます



さくらクリニック練馬 院長の佐藤です。
痙性麻痺とは、脳や脊髄がダメージを受けた時に、筋肉がガチガチに固くなって(痙縮)動かなくなる麻痺です。
筋肉の緊張を和らげる内服薬はありますが、脱力や眠気の副作用が強くて使いにくいのです。
そこでボトックス治療。
痙縮している筋肉だけに注射するので、正常な筋肉にはダメージを与えずに治療できるスグレモノ。
自宅でも治療できます。(医師が研修を受ける必要あり)
さくらクリニックでは、私を含めて5名が研修済み。情報交換しながら治療に当たっています。
今回ご紹介するのは、このブログに何度も登場していただいている鈴木荘太郎君。
左上肢の痙縮に対して定期的にボトックス治療を行ってきましたが、今回は内反尖足の治療がとっても上手くいったので、ご紹介します。

「ボトックス」とは、ボツリヌス菌から抽出した神経毒です。
神経筋伝達阻害により筋肉を弛緩させる作用があるので、ボツリヌス菌の食中毒になったら怖いですが、「毒は薬なり」。狙った筋肉に適正量を注射することで、ガチガチに痙縮した筋肉を和らげることができるのです。
上肢の治療は比較的簡単。なぜならば、固くなった筋肉に直接触れて、確認しながら注射できるからです。
例えば手関節の屈曲の場合
こうなってるのを
グイグイ開いて、橈側手根屈筋に注射するんですが、

筋肉が皮膚のすぐ近くにあるので、手首を曲げ伸ばしすれば痙縮している筋肉がすぐわかるのです。(大抵の場合 針金のように固くなっている)
まず間違うことはありません。
同様に 尺側手根屈筋にも注射。ここも皮膚直下なので、同定は簡単です。


写真☟は 握りこぶし変形に対する施術を受けながら、悠然と微笑んでみせる荘太郎君。
かれは左半身の痙性麻痺が強いので、これまで肘や手関節の屈曲、握りこぶし変形、親指の内転などに対して、定期的にボトックス注射を打ちながら、リハビリを続けてきました。

で、下肢の痙性麻痺で問題になるのは、内反尖足
トップの写真の様に、つま先立ち、足関節が小指側に倒れるような恰好で、固くなってしまうことが多いのです。
これでは立つのも歩くのも不安定になってしまいます。
内反尖足でターゲットとなるのは、腓腹筋、ヒラメ筋、そして後脛骨筋なのですが、これら下肢の筋肉の場合、上肢のようには簡単にはいかないんです。
写真☟は腓腹筋
これなら簡単にいくようにみえるでしょ?

ところが、今年の3月「痙縮セミナー」に参加した時、初台リハビリテーション病院の菅原先生に教えていただいたんですが、簡単そうに見える腓腹筋でさえ、特に外側頭のヒット率は低く、60%程度 とのこと。
更に難しいのが 内反の原因となる後脛骨筋

なぜか?
下の断面図を見てください。

後脛骨筋は下腿のかなり深いところにあり、絶対に触れることができません。こればっかりはブラインドで打つしかない。
私はこれまで、「脛骨の後面に沿って針を進め、血液が引けてこない(=血管を傷つけていない)ことを確認して注射」して、結構当たってる、と思っていたのですが、菅原先生曰く 後脛骨筋のヒット率はなんと10%!!なんだそうです。 これでは高いお薬がもったいない。
菅原先生は 筋電図モニターで筋肉を同定されているそうです。が、当院では菅原先生みたいに頻繁に施術するわけではないので、わざわざ買うのもなぁ、と。
そこで勉強熱心が深谷先生が、自らのおみ足にエコーを当てながら足首を曲げたり伸ばしたりして後脛骨筋を同定し、「これでいけるんじゃないか」とのことで、エコーをもって施術に挑みました。
そこに私も同行させていただいたわけです。
ただし、自由自在に柔らかく動く深谷先生のおみ足とは違って、荘太郎君の足関節は痙縮が強くて殆ど動かせない。だから「動かしてみてエコーで筋肉を同定する」のは 結構難易度が高かったです。

写真☟はマニュアルから。
これ見ても良くわからないですが、プローブを動かしながら、足を動かしながら、3次元的に同定していきます。

てか、私は後ろで適当なことを言ってただけで、深谷先生と荘太郎君、決してあきらめない二人の静かな戦いが続き・・・・、みごと後脛骨筋を仕留めたのでした。
(見事に仕留めると、注射した直後から関節が柔らかくなります)
この日の足の施術は下記の通り。
腓腹筋外側頭 25単位×2か所
内側頭 25単位×2箇所
ヒラメ筋   25単位×2箇所
後脛骨筋   50単位×1箇所
全てエコーガイド下での施術です。

注射したら、あとはリハビリ。
ボトックスの効果は3か月ほど続くと言われています。この間、何もしなければ元の木阿弥。注射して動きやすくなった筋肉と関節を、リハビリで伸ばす伸ばす伸ばす。多少痛くても頑張ってストレッチ。そして少しずつ可動域を広げていくのです。

さて、先日荘太郎君から嬉しいmailが届きました。

装具を付けて、立つのがだいぶ楽になりました。だいぶ先ですけど、歩きたいです。装具を付けたところをもし時間がありましたら見に来てください。僕は変わりました!

交通事故で重度の後遺症を負ってから12年。
退院し、さくらクリニックで訪問診療を受け持ってから11年。
最初の頃は 会話は全く成立せず、左上下肢は全く動かず、生活のすべてに介助が必要でした。
それが、こうして自分の足で立てるようになり、その喜びを生き生きとmailで伝えてくれるなんて・・・! 感慨もひとしおです。
では、その荘太郎君のりりしいお姿を。☟
左足がきれいに接地しています。ボトックス治療は大成功でした!

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