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「あなたの番です」最終回直前に考察してみた

「あなたの番です」最終回直前に考察してみた



さくらクリニック 院長の佐藤です。
SNSで加速度的に盛り上がりを見せている「あなたの番です」
第一章の最終回(主人公である菜奈ちゃん死亡)から見始めた不束者ではございますが、最終回ぎりぎり直前、がんばって考察してみました。

とは言え 前半観てないし、「扉の向こうへ」も観てないので、情報量にハンディあり。
なので私のアドバンテージを活かして、医療従事者ならではのツッコミをしてみよう。

■100mlの塩化カリウム製剤は存在しない
最終回予告で、ベッドに拘束された手塚翔太と黒島沙和の腕に点滴が繋がれ、「KCL」(塩化カリウム)と表記された薬液が繋がれています。
ちょっと見えにくいけど、右上に「100ml」と分量が記載されています。
が、100mlのKCL製剤は存在しません。下手をすると深刻な医療事故(最悪心停止)を起こす薬剤なので、10mlか20mlの規格しかありません。

☟ネットから拝借
こんな感じ
これをメインの点滴に混注して希釈して使うわけです。100ml製剤なんて 聞いただけで恐ろしいです。かつ予告編のKCL製剤には濃度(何mEq/ml)の表記がありません。(カリウム製剤に限らず、注射液は必ず濃度が記載されています。)
番組には医療監修が入っているはずだから、こんな基本的なミスをするはずがない。
ということは、これは二階堂君の演出であり、
・菜奈ちゃん殺害時の状況を再現してみたが、医療知識には疎いのでこんな感じになった
・あえて粗が目立つ舞台装置を作り、犯人をあぶりだそうとしている
どちらかじゃないかと。
もうひとつ。
■KCL製剤を静注すると、とっても痛い
死刑や自殺幇助でKCLが使われることがありますが、単独で使うわけではなく「最後の仕上げ」。
例えばアメリカの某州では、死刑でこのような順番で薬液を投与します。
1.鎮静剤を大量投与し、昏睡状態にする
2.筋弛緩剤を大量に投与し、呼吸停止させる
ここまでは手術の麻酔導入時と同じですね。本人はもう何もわからなくなります。その上で
3.KCLを大量投与。
ちなみに某州の死刑では240mEqと記載されてました。(人間の最低致死量のデータはない、とされています)

医療現場では低カリウム血症の補正にKCLの点滴をすることがありますが、希釈濃度や点滴の速度を間違えると(命に別状はなくても)血管が炎症を起こしてとても痛いです。
衰弱していたり昏睡状態の患者さんならともかく、健康体の人に致死量のKCLを静注したら、さぞかし痛いはず。

もし菜奈ちゃんの命を奪ったのがKCLだとすれば、KCL投与前に意識を奪われ痛みを感じなくなっているはず。そうじゃないと残酷すぎるし、微笑んでられないはず。
番組の流れ的には「笑気ガスを使った」ということになるのでしょう。

二階堂君は犯人の可能性のある人物(翔太君and/or黒島さん)を試そうとしているのでは?
でも「KCL点滴して殺すゾ」と告げた場合、犯人の反応としては
・このKCL製剤はフェイクだとわかっているから、動じない
あるいは実際に手を下したのが共犯者であり、自分は薬品についての知識がない場合は
・大慌てで取り乱す
どっちもありなので鑑別できない気がしますが・・・。

■医療関係者でなければ、あえてこの殺害方法を選択しないだろう
KCLで殺害されたのは菜奈ちゃんだけ。
知識も経験もない人が、あえてこの殺害方法をとるのは不自然。しかも静脈注射のラインをしっかりとらなければなりません。殺害現場で「静脈がとれません」とか「漏れちゃいました」とかやってたら、話にならない。
このドラマで医療関係者は藤井先生と看護師桜木るりさんです。藤井先生はもう役割を終えた感がありますが、桜木さんはまだこう、しっくりこないところがあります。袴田吉彦殺し、久住譲殺害未遂に加えて、藤井先生の田中正雄殺害まで被ろうとした桜木さん。その理由が藤井先生を「愛しているから」っていうんだけども、自分の人生を犠牲にするほどの献身的な愛情をこんな奴(あ、ゴメンナサイ)に捧げる、というのが何だか唐突でしっくりこない。本当の理由がまだ明かされていない感じがします。

■微笑む死体の謎
番組の流れとしては「笑気ガスを吸ったから微笑んで死んでいる」みたいな感じになってますが、これはどうでしょう?
医学部時代、麻酔科の実習で笑気吸入を経験したことがあります。数人のグループで順番に笑気を吸って、その様子を見物(見学)するんですが、「微笑む」とか「大笑いする」というより口角をギューッと上げて、強いて言えば気味の悪い「ニタニタ顔」。しかも閉じた瞼の下で眼球がグリグリ動いている(REM睡眠の時のように)。
麻酔をかけられた側の意識はどうかというと、人によって様々でしたが、「可笑しくて大笑い」の人は誰もいませんでした。ちなみに私は「宇宙空間を静かに漂っている夢をみている」感じでした。可笑しくも怖くもなく、ただ静かに浮かんでいるという。
ですがその間 私も目ん玉グリグリ口元ニタニタ、だったそうです。
濃度と吸入時間にもよると思うんですが・・・。
仮にラリって一時的にケタケタ笑う状態になったとしても、笑気ガスは吸入を止めると即座に切れます。犯人の意図が「微笑む死体をつくる」ということであれば、適切な方法とは思えません。

■死後写真(Post-mortem photography)
この写真、「ちょっと表情が固いな」という感じはしますが、まさか死体には見えないですよね。でも死体なのです。
ヴィクトリア朝時代(19世紀)、イギリスでは死者をまるで生きているかのように見せかけ記念撮影をする遺体の記念写真(ポストモーテム・フォトグラフィー)が流行していたんだそうです。
悪趣味ではありません。愛する人を亡くした家族(おそらく裕福な階級に限られる)が哀しみを乗り越えていくために、故人の安らかな死に顔を、あたかも生きているかのように撮影して残す、という文化だったようです。
具体的な技術はわかりませんが・・・。
この写真ほど手の込んだことはしないですが、今もある程度ご遺体の「表情の修正」は普通に行われています。
例えば目を見開いたまま、口を大きく開いたまま、とか、苦しそうな表情だったりすると、葬儀会社の方が安らかなお顔に「修正」してくれます。
でも菜奈ちゃんはともかく、赤池夫婦や浮田さん、刑事の神谷さんは、死亡直後に発見されているので、この方法ではないですね。
ということで、モヤモヤしつつ・・・わかりません!

もうね、今日は一日中これ(あなたの番です、の考察)ですよ。ご飯も食べずに・・・。

ひとまず続く、にしてご飯食べよう。
最終回開始前に、がんばって続きを書くつもりです。






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