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🌸私の皮膚科の師匠をご紹介します③ ~症例報告その3🌸

🌸私の皮膚科の師匠をご紹介します③ ~症例報告その3🌸



さくらクリニック練馬 院長の佐藤です。
🌸私の皮膚科の師匠をご紹介します(コラム「Enjoy! ALS」連載再開記念)🌸
の続編です。
今回は、臀部のびらん性皮膚炎で治療に難渋した症例をご紹介します。

 

症例3
66歳(当時) 女性
封入体筋炎 発症から8年(当時)。
四肢の筋力が低下して、床上生活。呼吸筋も弱くなり、24時間NPPV(通称バイパップ)を装着。
誤嚥性肺炎を繰り返し、絶飲食。CVポートを造設し、高カロリー輸液を投与している。(事情があって胃瘻造設はできなかった)

下痢便でお尻が真っ赤に

オムツかぶれで時々お尻がびらんし、亜鉛華軟膏+アズノール混合剤で治していたのですが、誤嚥性肺炎で抗生剤点滴治療をしたところ 副作用でに下痢便となり、臀部が広範囲にびらんしてしまいました。
かなり痛そうです。ここは梶浦さんに写真を送って相談。

梶浦さんからのアドバイス

診断:臀部びらん性皮膚炎(一次性接触皮膚炎)
継続する便の刺激による上記の可能性を考えます。
便が皮膚に付着している時間が長いほど悪化しますので、便が出るたびに洗浄することが好ましいですが、難しいですよね。 (*→諸事情で、それは難しいです)
訪問看護師さんが毎日入っているみたいですので、訪問看護師さんの時間に毎回処置するようにしてください。
接触皮膚炎がベースですので、被覆剤は悪化する可能性がありますので使用しない方が良いです。
炎症が強いので最初のうちは強めのステロイドが良い
かと思いますので、トプシム軟膏と亜鉛華軟膏の1:1mixを50g処方してください。
改善したらランクダウンした方が良いので、1~2週間後にはまた診せてください。
処置方法
ぬるま湯できれいに洗浄(亜鉛華軟膏が落ちにくい時はオリーブオイルで拭き取ると良いです)してから外用剤を厚く塗ってください。

さっそくその通りにしました。
私がやったわけではなく、訪看さんに申し送ってやってもらったのですが、患部の炎症は見る見る引いていきました。

ステロイド著効

2週間経過したので、写真でご報告。

梶浦さんからのアドバイス
かなり良くなりましたね。ランクダウンしましょう。
メサデルム軟膏と亜鉛華軟膏の1:1mixを50g処方してください。

二次感染予防のため、改善したらさらにランクダウンした方が良いので、1~2週間後にはまた診せてください。

ステロイドの外用剤は、強さのランキングがあります。強いほど効果は高いんですが、その分副作用が大きくなります。
短期的な問題としては、免疫抑制による感染症リスク。
そこは皮膚症状を見ながら、小まめに変更の指示をいただきました。

秘密兵器「ボチシート」

便は仕方ないとして、尿による刺激を抑えたいので一時的に尿道カテーテル留置を提案しましたが、ご本人は断固拒否。
以前入院中に尿道カテーテルを留置されたことがあって、それが物凄く痛かったそうなのです。
「お尻は痛い、尿カテも痛い、じゃ辛すぎるから、勘弁して。」と懇願されてしまいました。

梶浦さんの往診時に「尿カテは拒否されちゃった」と相談したら、「ボチシート」なる秘密兵器を提案されました。
亜鉛化軟膏のシート材だそうです。

添付文書より☟

四層構造:プラスチックフィルム(分割線入り)・プラスチックネット・軟膏・リント布

さっそく導入。外用剤はこれまで通り塗布して、最後にボチシートで臀部を覆います。
これは効果てきめん。皮膚に密着して便汚染を防いでくれるので、痛みもだいぶん和らぎました。

真菌感染の合併

梶浦さんがいつも気にしている 感染症の合併です。
実は訪看の看護師さんが梶浦さんにマメに写真を送ってくれていたので、それを見て、いち早く梶浦さんがアドバイスをくれました。
実はこの患者さんに入っている訪看さんは、梶浦さんの訪問看護にも入っています。
なので、私と同じく、訪問看護としてケアしつつ、困難症例の相談をする、という関係性になっているのです。☺

梶浦さんからのアドバイス
診断:臀部びらん性皮膚炎 +真菌感染疑い
訪問看護さんに臀部の写真を見せてもらったところ、びらん周囲に白苔の付着を認めたため、上記の可能性を考えます。
ただ、ステロイドはやめて、ラミシールクリームに変更をお願いします。

その後

ボチシート+ラミシールクリームに変更して1か月後
白苔は消失し、炎症も全体的に改善。茶色い色素沈着となっています。

梶浦さんからのアドバイス
かなり良くなりましたね。
肛門周囲のびらんも治りました。ボチシートは皮膚の保護と痛みの軽減の意味で使っておりましたが、痛みがないのであれば、一度やめてみるタイミングだと思います。
亜鉛華軟膏の重ね塗りも無しで、ラミシールクリームの外用のみを継続お願いします。

その2か月後にはラミシールクリームを中止。
便汚染の状況に応じて亜鉛化軟膏かワセリンを塗布。
「お尻にしみる感じ」がしたら、部分的にボチシートで保護しています。
今年は抗生剤の点滴をせずに過ごせていて、ひどい下痢になっていないことも幸いし、「お尻はもう大丈夫よ!」な状態が続いています。

 

 






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