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不便だけど不幸じゃない~ALS患者さんの生活の工夫

不便だけど不幸じゃない~ALS患者さんの生活の工夫



さくらクリニック練馬 院長の佐藤です。
昨年9月には、梶浦智嗣さんのブログ「enjoy! ALS」をご紹介しました。
一時は当院の検索ランキング1位に躍り出ましたよ!
彼の連載はその後も定期的に続いていますので、ご興味のある方はいってみてください。

さて、今日は次なる文豪(笑)の文章をご紹介したいと思います。
彼は現在45歳。32歳で発症したので、ALS歴13年の大ベテランです。
この病気は、症状の出方や進行速度に個人差がとても大きいのですが、彼は進行がとてもゆっくり。
とはいえ、指先がわずかに動く以外は手も足も殆ど動きません。座ることはできますが、体が傾いたら自分では戻せません。
食事は胃瘻からの経管栄養がメインで、趣味的に食べたり飲んだり。それも姿勢や首の角度など、微妙な調整が必要です。
そんな不便な生活ではありますが、彼はそれを不幸と嘆くのではなく、生活しやすくするためにあれこれ工夫するのを楽しんでいます。
その様子を文章にしてくれましたので、ご紹介します。
梶浦さんもそうですが、行間から前向きのパワーが光のように射してくる、そんな文章です。

YOU TUBEでSUSURU.TVをみる

「ああ、ラーメンが食べたい。」
ユーチューブでSUSURU TV.を見まくっている私は、四六時中ってわけではないけどそう思うことが多い。元々ラーメン好きの私は、よく店に食べに行ったり、ラーメン屋でバイトしてた時には週5で賄いラーメンを食べていた。
もしiPS細胞で嚥下機能が治ったとしたら、SUSURUのようにラーメン屋巡りを毎日したい。それぐらいラーメンは魅力的で飽きない。まあ、これは私の夢だね。
ユーチューブを見るためにはパソコンに向かわねばならない。机の正面に画面があるのだが、私のパソコン机は生活の工夫がある。

机の右側には緊急ブザーを押すための板が立て掛かっている。手がほとんど動かないので、体を右に傾け、頭で板を押し、板の裏に付いてるポッチで緊急ブザーのボタンを押す仕組みだ。
独りでいる時にこれが押せないと不安で仕方ない。

更に机の手前には、ドリンクホルダーが空中に浮くように(高さ20㎝ほど)設置してある。ここに280mlのお茶のペットボトルを置いて、ストローキャップを付けて飲むのだ。机の上に置くと低すぎて飲めず、苦肉の策だったわりには意外にも良案だった。

そして私はこの机に向かうのだが、昇降椅子を上げて高さを合わせたあと、頭が支えられる段ボール製の背もたれ(☟)を、背中の後ろに差し込む。
首に力がない私は、顔を上げたままの状態で保てないのだ。頭まで背もたれのある昇降椅子を試したことはあるけど、私にはうまく馴染まなっかった。

コックピット

「なんだかガンダムのコックピットみたいだね」
そう言ったのは、うちに入っている訪問看護ステーションのOT(作業療法士)さんだ。私は「アムロ、行きま~す!」って言いたいけど、言わない。いや、しゃべれないから言えない。
社長でもあるこのOTさんを中心としたリハビリスタッフやヘルパーさんが、私の残存機能に合わせた自助具を作ってくれている。私が「こういう感じのものが欲しいんだけど……」と言うと、あれこれ考えて作ってくれる。これは感謝以外のなにものでもない。皆さんに生活を支えてもらっているおかげで、私はラーメン視聴タイムを楽しめるのである。

工夫次第

私は独居のALS患者だが、「かわいそう~」とか、「難病中の難病だ」とか、「不幸だね」とか、ネガティブな言葉をよく聞く。たしかにそうなのかもしれない。でも工夫次第で生活は豊かになると思う。
例えば自助具。私が生活して行くために必要な自助具は手作りの物が多い。障害者の身体は一人一人違うので、既製品が合わないことが結構ある。そんな時、「無い物は作れ」という思考回路が働く。これは私が過去に演劇をやっていた影響だろう。
「ああ、ここはこうなるのかぁ~、なるほどねぇ~。」
自助具が出来上がっていく過程が面白いのだ。作成中のOTさんやヘルパーさんを見ていると、わくわくするし感心してしまう。そして完成品を使って不自由がなくなった時、「まだまだいけるぜ!」と、これからの生活が自信に満ち溢れるのだ。そのぐらい自助具は大切だ。
そういえば社長のOTさんが言ってたな、「利用者の身体に合った自助具を作っているステーションはほとんどない。あるにはあるけど本当に少ない。」って。
作ってくれるステーションがもっと増えればいいのになぁ。そうすれば障害者の生活がもっともっと快適になるのに。
そういうケアを受けている私は人に恵まれてるんだろう。

最近の最高傑作

ちなみに最近の私の工夫の最高傑作はスリッパだ。
歩けなくなってから足の親指の巻き爪がひどくなった。だからスリッパを履くと親指が痛い。でも履きたい。
そこで私が考えたのは、スリッパの親指部分をカットし、親指を外に出してしまおうというアイデア(五本指ソックスが良い)。痛みがなくて本当に楽ちんだ。巻き爪でお悩みの皆さん、これはマジでおすすめです。

山村 ヒガシ

主治医 注釈

  • 「僕のいた時間」という、この病気を扱ったTVドラマがありましたよね。(2014年)
    そのドラマ作りのため、取材協力したのが、山村ヒガシさんです。
  • 陥入爪治療について
    主治医として弁明しますが、これでも大分良くなったんです。
    爪先の白い部分、両端がカーブを描いているでしょう? クルっと巻いていたのを形状記憶ワイヤーで矯正して、ここまで良くなりました。
    皮膚科の先生の様にエレガントにはいきませんが、山村ヒガシさん同様、在宅主治医も家でできる治療法を色々工夫しているのです。

 

 






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