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利用者ブログ【第1章 3- 家で本当にやれるのか?】

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3 家で本当にやれるのか?

 

退院後、実際に家でやっていけるか不安で一杯です。

そこで、かねてから息子のことをよく知っている障害者相談支援事業所のKさん(相談支援専門員)に相談することになりました。

・体調は落ち着いてきているが体力や筋力の回復はまだ時間がかかりそう

・自宅で生活させたい(介護は両親が行う)

・医療的ケア(吸引と胃ろう)は必須

・家では何を揃えておいたら良いか?

・今後、医療や福祉で活用できる制度は?

今までも数々の手術や病気で入退院を繰り返した経験はありますが、退院後はそれまでと同じように家で親が世話し、病院への通院や役所の手続きという流れは変わりませんでした。

しかし、今回は「医療的ケア」が必要ですし、医療福祉関連の法制度も改正されており、新しい仕組みはどのようなものか、何を調べ、どこでどう手続きをすればいいかさっぱりわかりません。

最近はなんでも「自分で調べ、必要なものを揃えてから申請してください。」という申請主義がほとんどなので、知らなければ知らないまま終わってしまいます。

適切な支援を受けるためには、独りよがりにならず、「相談」から始めるのが良いと思います。

そのトータルコーディネートを行ってくださったのが相談支援専門員のKさん。

「支援していただける訪問医療機関、利用できる公的制度をうまく活用し、息子さんとご家族が安心して「家」で過ごせるよう最善の方法を考えていきましょう!」と。

 

【メインは訪問診療と訪問看護による医療連携】

入院中は1日24時間の手厚い看護でしたが、息子の場合、訪問では医師は1~2週に1回、看護師は週2~3回で、それぞれ1回30分~60分程度になるようでした。(体調が悪化した場合は決められた日以外にも緊急で来ていただけることもあります。)

息子は誤嚥性肺炎のリスクや症候性てんかんによる強い発作もあるため、常に見守りが必要です。

訪問の医師や看護師がいない時間、つまりほとんどの生活時間は親だけで見守りや処置を行うことになります。

しかし「吸引」一つとっても、すぐにする方が良いのか、しない方が良いのか、失敗して出血したらどうすれば・・など不安が尽きません。

・24時間サポート

何かあれば訪問日以外でも電話対応や緊急で来ていただける「24時間サポート」がある事業所(訪問診療クリニックと訪問看護ステーション)が一つのポイントになりました。

24時間と言っても終日営業しているわけではありません。業務時間内(例えば平日9時~17時など)であれば対応が可能な医師や看護師による相談対応や臨時訪問、業務時間外の場合はオンコール当番制でのサポートが多いようです。

実際に在宅移行後、急な体調不良で臨時の訪問診療や電話による問診により高次の医療機関(主に総合病院や大学病院)への取次ぎ(紹介)、入院調整などを行っていただいたことがあります。日頃訪問医に診ていただいているからこそ、今の症状は緊急性があるか、どのような検査(CTやMRI、内視鏡による精密検査など)が必要かなどの早い判断をしていただくことができ、とても助かりました。

また、そこまで緊急性がある症状ではないと思われるものの、夜間や病院に行けない時間帯で不安な場合は、訪問看護にお願いして立ち寄っていただくこともあります。

定期的な訪問以外の対応は契約の内容によって異なります。一定額の範囲の場合もあれば、利用するたびに別途費用が発生し、保険適用外の扱いになってしまうこともあります。

そもそも診療も看護も限られた人員の中でのサポートなので、あくまでも「いざ」という時の安心としての仕組みです。

・息子はコミュニケーションが難しい

もう一つ心配していたのは、担当してくださる先生や看護師さんの障害児者(特に知的障害)に対する理解です。息子は「痛み」や「苦しみ」を表出できませんし、先生や看護師さんからの簡単な質問も理解できません。24時間一緒にいる家族でも、息子の容態を具体的に説明できないことも多いです。

わがままな親の希望ではありますが、表面的な対応では無く、息子に対してきちんと向き合っていただけるのか。訪問医療はそうそう経験しませんし比較もできないので実際どのようなサポートを受けられるのか分かりません。そこで、いろいろなケースをご存じの相談支援専門員Kさんに障害児者支援にご理解のある事業所を推薦していただきました。

Kさんに相談できたことは、ネットなどの文字情報だけでなく、Kさんが持つ経験や人脈が、私たちにとって「良い訪問医療との出会い」を導いてくれることになりました。

– 障害者相談支援専門員Kさんからのコメント –
入院先のリハビリ病院から「在宅での療養生活は難しい」とお話しあったと聞いて、それまで多くの障害を持った方や在宅医療を受けながら生活されてきた方を拝見してきた経緯もあり、彼なら絶対にお家に戻れると確信していました。ただ、それには訪問診療に入ってもらわないことには始まらないと考え、他の利用者を診てもらっていたさくらクリニックに相談しました。訪問看護ステーションは訪問診療を受けてもらえると返事をもらってからさくらクリニックの医療相談員と一緒に検討しました。主治医の先生には他の患者さんを担当いただいたこともあり、能動的に関わってくださることも知っていたので、さらに安心してお任せすることが出来ました。在宅医療が初めてでご両親にも不安があったと思いますが、その点では後押しできたのかと思います。

 

【段階的にリハビリも】

在宅での医療的ケアや訪問診療・看護が軌道に乗り、体調が安定してきたら体力や筋力の回復のために「リハビリ」に進みます。

これを先送りにしてしまったら、再び廃用症候群(筋力低下)になってしまいます。

「看護」と「リハビリ」は、体調の申し送りなどの連携が重要ですし、医療的ケアや訪問診療とも絡みますので同一事業所(訪問看護ステーションで提供しているリハビリ)で実施していただけると助かります。

退院したときのタイミングにもよりますが、理学療法士さんは比較的スケジュールを組みやすかったので「筋力・基礎体力の回復」と「呼吸器を鍛える」で、「立つ・座る・歩いてみる」を進めることにしました。

作業療法や言語療法は、それを行う「作業療法士」、「言語聴覚士」の人数が少なく、それぞれのセラピストが揃った段階で方針を決めることになりました。

・リハビリ時間の不足

回復期リハビリ病院では毎日リハビリが実施され、土日祝日の休みも無く、1日3時間、週に最大で21時間です。それに対し、訪問の理学療法士さんは週1回40分~60分を確保していただくのがやっとでした。

気が休まる在宅ではありますが、訪問診療が週1回、訪問看護は週3回、それに加えて訪問リハビリが入ることになります。

親は、日々の身体介護や医療的ケアに加え、不足するリハビリもやっていくのは大変ですが、皆様方のご支援をいただきながらより良い在宅療養を実現出来れば嬉しい限りです。

 

【訪問薬局も利用】

最近の病院の処方はほとんど院外処方箋で、調剤薬局を探す必要があります。

自分の薬なら買い物ついでに薬局に寄ることもできますが、家で介護を必要としている家族がいると、外出そのものが困難で、家を離れずに薬を入手できることはとても助かります。

訪問薬局の薬剤師さんは、単に「届けてくれる」だけでなく、体調の変化や服薬・保管状況などの確認も行ってくださいます。

もちろん店舗型の薬局でも親身になってくださる薬剤師さんはいますが、薬の種類と数の確認、会話は「調子はどうですか?」、「変わりません」「では○○円になります。」というレベルで終わってしまいがちです。

それに対し、訪問では「○○を服用されていましたが、その後は改善していますか?」、「お陰さまでようやく落ち着いてきたようです。」「お大事になさってくださいね。あ、そういえば前の~はどうでしたか?」などと話が膨らみ、目の前の患者・家族を大切にしてくださっていると感じます。

訪問の薬剤師さんであれば家で息子が顔を合わせることもできますし、息子も顔見知りになった薬剤師さんが玄関のチャイムを鳴らすのを楽しみにしています。

 

【障害福祉サービスも利用したい】

今後リハビリが進み、外出できるようになってきたら、手術前に利用していた移動支援サービス(余暇活動としての散歩など)や障害者のショートステイ(短期宿泊)を利用したいです。ついつい回復する前提でのことばかり考えてしまいますが、果たしてどこまで回復してくれるでしょうか。

実際には歩けるようになったとしても、歩行中に「吸引」が必要な場合は、看護師や吸引できる資格を持つヘルパーが吸引器を持ち歩いて同行する必要があり、そこまで対応していただける移動支援等の事業所は限られているようです。

また、前に利用していた障害者のショートステイ(宿泊)施設であっても、「医療的ケア」が必要になると断られてしまいます。終日看護師の常駐が必要になるので、対応可能な施設が少なく、事前にリハーサルが必要だったり、遠い施設までの送迎も負担となり、このサービスを利用するのは簡単では無いことが分かりました。

 

【すべてが希望どおりになる。。わけではない】

在宅で安心して日常生活を過ごすことができることが願いです。医療福祉制度を上手に活用できれば、介護者の不安や負担も軽減できますし、もう少し回復を進められるかもしれません。

しかし、何でもかんでもこちらのニーズに合うような支援を受けられるわけではありません。退院してから徐々にマッチングさせていけば良いものもありますが、残念ながら支援の手がそこまで届かない(人が足りない、制度が不十分、物が手に入らない、地域的な問題など)ことも多くあります。

良き支援者に出会うことは簡単ではありませんが、十分ではないと感じる部分を補って少しずつ介護の質を高めていくことができれば一歩前進です。



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