家族が認知症かも・・・どう対処したらいいの?(その1)
家族が認知症かも・・・どう対処したらいいの?(その1)
2019年09月11日
さくらクリニック練馬 院長の佐藤です。
「家族が認知症かも・・・ どう対処したらいいの?」というお題で、いつもお世話になっている孫の手倶楽部さんから7月にインタビューを受けました。
8月「孫の手だより」に紹介された記事を 当院のブログでも荒川が紹介してくれています。
https://sakura-cli.jp/nerima/wp2019/archives/3364
が残念ながら、PDF画像なのでスマホでは読みにくいようです。
また、インタビューではもっとたくさん、いろんなお話をしました。
せっかくなのでそれも加えて なるべく分かり易くまとめて ここでご紹介したいと思います。
以下、Q&A形式で。
■老化による物忘れなのか、認知症によるものなのか、両者の症状の違いについて教えてください。
老化とともにからだの機能が低下していくのと同じように、記憶力も低下していきますよね。何しろ記憶力のピークは10代後半ですから。
では、どこまでが「年のせい」で、どこからが「認知症」でしょうか。
明確な線引きができるわけではありませんが、両者の特徴を描写してみます。
- 老化による物忘れ
経験したことや予定の一部を忘れる。思い出しにくい。新しいことを覚えるのが苦手。(人、地名、単語など)
自分で「ぼけたかな?」と感じて、人にも気軽に「年だわ」、「ぼけてきちゃった」と話せる。 - 認知症による物忘れ
経験したこと自体を忘れる。
「記憶を盗まれた」ように感じる。
新しいことを覚えるのが非常に難しくなる。
一般的に「認知症患者は物忘れの自覚がない」と言われますが、病初期は決してそんなことはありません。内心「その記憶が全くない」ことに動揺するのですが、認めたくないのです。
学歴や地位が高かったり、プライドの高い方ほどその傾向があります。
恥ずかしい、屈辱的だ、自分がボケてきたなんて 想像するのも耐えられない。
そんな人ほど 家族にも親しい人にも隠そうとします。 - 例えば、「買った切符をどこにしまったっけ?」といった程度のことは 誰でもありますよね。
あちこち探して見つけて、「ここにしまったんだった」と思い出します。これはよくあること。 - それに対して、バッグの前ポケットに切符が見つかりました、でも間もなく また切符を探し始める。それを何度も繰り返すなら、ほぼ確実に認知症です。
- 付き合いの浅い知人の名前が中々出てこないとか、あの人は今どこで何をしてるんだったか 忘れてしまう。この程度は生理的老化。(私も結構あります・・・)
- でも 家族、普段から付き合いのある親戚、親しい友人やご近所さんについて、記憶が定かでなくなったら 怪しいです。
- うちのおじいちゃん、大丈夫かな?と思ったら、ちょうどいい話題は、離れて暮らしているお孫さんのこと。
名前、だいたいの年齢、今高校生か大学生か、あるいは就職しているか、等々、混乱が見られるようなら、認知症を疑ってください。
(一般的に、新しいことから記憶が薄れていきます。もう就職したお孫さんを、中学生だと思い込んでいる、とか。)
度忘れしてしまうこともあるでしょう。でも何度も同じことを尋ねるなら、認知症の可能性が高いです。
■家族に認知症のような症状が現れたとき、会話や行動などから、確認するポイントについて教えてください。
「疑いポイント」を挙げます。
- 忘れたことを隠そうとする、ごまかす、否定する。指摘されると不機嫌になる、怒り出す。
- 何度も同じことを聞く。「子供が帰省するのはいつだったか?」、「孫は今高校生だったか? 中学生だったか?」等。
- どこに置いたか忘れてしまうので、いつも探し物をしている。
- パソコンの操作、携帯電話の操作など、これまで出来ていたことができなくなる。
- 無為に過ごす、あるいは寝て過ごす。
- アルツハイマー型認知症の場合、道に迷う、簡単な計算ができない、服を着る手順がわからなくなり時間がかかる(着衣失行)等。
■認知症のような症状が現れる、他の疾患にはどのようなものがありますか?
これは大事ですね。治せる認知症を見逃したらもったいないです。
- 内科的病気が隠れていないか?
- 体調が悪いと 頭の回転も悪くなりますよね。心臓病、腎臓病、肝臓病 などなど・・・。
長らく健康診断を受けていない方は、まずは検診を受けましょう。 - 降圧剤を飲んでいる方は、血圧の下げ過ぎに注意してください。
血圧を下げすぎると脳に血が回らず、「ボケたみたい」に見えることがあります。最悪 脳梗塞の原因になりますので要注意。
私は、高齢者の方は多少高めでも良しと考えて血圧をコントロールしています。
収縮期血圧(上の血圧)が110以下なら、降圧剤を減量~中止しています。
- 体調が悪いと 頭の回転も悪くなりますよね。心臓病、腎臓病、肝臓病 などなど・・・。
- うつ病の可能性
うつ病は、脳と心のエネルギーが枯渇しそうになった状態。思考も回らずやる気も起きませんから、ご高齢者の場合は認知症と勘違いされやすいです。
うつ病までいかなくても、悩みやストレス、睡眠不足などで「抑うつ状態」に陥っていないか?
休息やお薬で症状改善できますので、見落とさないよう(医者に見落とされないよう)気をつけましょう。 - その他、治せる認知症ではないのか?
- 慢性硬膜下血腫
- 正常圧水頭症
この二つは頭部CTを撮ればわかります。 - 薬剤性認知症
- 抗コリン作用のある薬
- 抗不安薬
- 抗精神病薬
- 抗うつ薬
いろいろありますね。
薬については、効果と副作用、飲み合わせなど 総合的に考えなければならないので、素人判断はダメです。必ず医者に相談してくださいね。