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🌸在宅でカニューレ不適合のトラブルが起こった時🌸

🌸在宅でカニューレ不適合のトラブルが起こった時🌸



☝ 美登里さん 最近ショートカットにして、ますます若く見え 年齢不詳に・・・

さくらクリニック 院長 佐藤です。
秘書の竹下が、先日の喉頭ファイバー検査の様子をブログにあげてくれました。👏
その続編として、
・どんな時に、この検査が有用か?
・検査をすることで、何ができるのか?

について、私からお話したいと思います。

カニューレって何?

気管切開したら、開けた孔が塞がらない様にカニューレを差し込んで固定します。
(永久気管孔を作った場合を除きます。)
形状は色々あるのですが、下の写真のような形のものを使うことが最も多いです。

*フリー素材から拝借しました。

気管切開孔からカニューレを期間内に挿入し、風船(=カフエア)を膨らませて固定します。

使い方については、以前スタッフが解説動画を作ってくれたので、詳しく知りたい方は見てみてくださいね。

🌸カニューレ交換について🌸

気管切開の手術は病院でして、その時に担当医の先生がカニューレの機種とサイズを決めてくださいます。
自宅ではそれを引き継いで、通常2週間に1回カニューレを交換します。

「適正なカニューレ」であることが必須

もう一度 上の図を見てください。
適正な形状とサイズのカニューレだと、こういう感じできれいに収まるのですが、

  • 短すぎたり径が小さすぎると、固定が上手くいかず不安定になってしまいます。
    (最悪抜けてしまう)
  • 長すぎれば気管分岐部を超えて右か左、どちらかの気管支に入ってしまいます。
    (最悪先当たりして、塞いでしまう)
  • カーブの角度や形状が合わないと、カニューレの先端やバルーンが変な場所に当たってしまい、最悪 潰瘍や肉芽などのトラブルが起きてしまいます。

 

自宅では、直径1cmほどの気管切開孔から少し覗ける程度で、気管の奥の方は全く見えませんから、カニューレのサイズや固定位置が適切かどうか、判断できません。

万が一のトラブルが怖いので、カニューレのサイズや機種を変えることは、あまりしたくありません。

でも、残念ながらトラブルは起こる

誰でも、ではありませんが、カニューレに関するトラブルは、少なからずあります。
(気切孔の脇に小さな肉芽ができて、交換時に出血する、くらいなら 軟膏を塗って様子を見ればいいので、トラブルのうちに入りません。)

美登里さんの場合、

  • 交換のたびに側管(上の図だとカフ上部吸引ライン)から大量に血液が引けてくる
  • 血液が固まると 側管が詰まってしまう
  • 誤嚥して気管の中に入った唾液を側管から低圧持続吸引器で吸引しているのが、機能しなくなる

という困った状態になりました。
見える範囲に肉芽その他の出血源はないので、どう対応したらいいか判断できません。

  • 奥に巨大な肉芽ができているかもしれない。
  • それがちぎれて落ちたら 気管支を塞ぐかもしれない。
    (以前、ナメクジのような巨大肉芽を釣り上げて切除した経験があります)
  • カニューレが先当たりしていて、その刺激で固い肉芽ができて気道を塞ぎ、換気に支障が出るかもしれない。
    (苦い経験あり・・・。後述します。)

美登里さんは24時間呼吸器を着けていて、自力では全く身動きできないので、「ちょっと病院に行ってきて」という訳にはいきません。

そこで、「往診して喉頭ファイバーで気管内を観察してくださる耳鼻科の先生」を探し回ることになります。
この大東京でも、そんな奇特な先生はなかなかいらっしゃいません。。。
今回も 以前お世話になった 代々木の森耳鼻咽喉科森幸子院長先生にご相談したところ、快く引き受けてくださった次第です。

美登里さんの場合・・・

手順は竹下のブログを見てね。

  1. 私がカニューレを抜く
  2. 森先生が喉頭ファイバーで中を見る
    出血していたので、視野を得るために細い綿棒で血を拭きとりながら、あっという間に患部を観察。
  3. 私が新しいカニューレを入れる

この間、1分もかかっていません。

検査の結果、時計で言ったら11時の方向の 入って1㎝くらいのところに 炎症性の柔らかい肉芽ができていることが判明。
カニューレ交換のたびにここが擦れて、出血していた、だけではなく、普段もちょっとした刺激で出血する状態になっていました。

美登里さんは、ベッドと呼吸器の位置関係なんかもあって 右向きで過ごすことが多くて、以前から気をつけていたつもりだったのですが、どうしてもカニューレが傾いて粘膜を傷つけてしまっていたようです。
対策としては、

  1. カニューレを交換する時、バルーンにリンデロンVG軟膏(ステロイド+抗生剤入り)を塗る。
  2. 11時方向の気管切開孔の脇から リンデロンAローションを2・3滴垂らして、患部に浸潤させる(1日1回)。
  3. 呼吸器の回路の位置は常に体の真ん中で、横に傾かない様 気を付けてもらう。

とご指導いただきました。

それから1週間。
なんと昨日のカニューレ交換の時は 久々に全く出血せず、その後も側管からの出血の報告はありません。これでいけそうな予感。
治療の目安は リンデロンAローション(10ml)を使い切るまで。
全く出血しなくなれば良し。
出血が続くようなら、森先生がまた診にきてくださると仰ってくださいました。
ありがたや💓

カニューレ不適合を見逃さない!

美登里さんは、上記のような簡単な対応で解決できそうなので、本当に良かったです!

でも、カニューレの先端やバルーンが気管壁に当たることで炎症性の固い肉芽ができて、換気に影響を与えたり、最悪窒息してしまう危険性もあるのです。

森先生も気管の3/4くらい肉芽で塞がっている症例を経験したことがある」と仰っていました。

私は20年近くこの仕事をしてきて、
・カニューレ不適合が原因で死に至った方
・命は助かったけれど、重度の脳障害を負ってしまった方
を 1名ずつ経験しました。
後者の方は、今も私が主治医を務めています。

命を救うために選択した気管切開なのに、病気とは無関係のトラブルで命を縮めたり大きな害を及ぼすことになってしまったのです
もう こんなことは絶対にあってはならない。

そう肝に銘じ、怪しいと思ったら内視鏡で観察していただくよう心がけています。

とはいえ、美登里さんのような病状の方にとって、病院受診はかなり大変です。
森先生のように、往診して喉頭ファイバーで気管内を観察した上でアドバイスをくださる耳鼻科の先生が もっと増えてくれますように・・。
そういう連携づくりも、私達在宅医のミッションだと思っています。






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