🌸低圧持続吸引器~二股式吸引法のご紹介🌸
🌸低圧持続吸引器~二股式吸引法のご紹介🌸
2019年01月10日
院長 佐藤 です。
昨年12月 診療助手荒川から「スポンジヘッド式持続吸引チューブ」の作り方をご紹介させていただきました。(注 名称は勝手につけちゃったものです)
実はこの記事を読んで、早速作ってくださった方がいます。そうしたら、今までメラチューブを嫌がってペッペッと吐き出してしまっていた患者さんが、大いに気に入って、使い始めたんだそうです。 こういうのは嬉しいですね。
(後日 できれば使っている様子も含めてご紹介します)
今日は、同じく唾液の低圧持続吸引器について、別の工夫例をご紹介いたします。
特にALSの患者さんで、標準的な低圧持続吸引器ではうまくいかない方のご参考になれば幸いです。
低圧持続吸引器の基礎知識については、上の荒川のブログを見てください。
通常の使い方は、こうして吸引チューブを1本くわえて、口の中の唾液を少しずつ吸い取ります。
(☝毎度ご協力いただいている 林修士さんのお写真)
ところが志垣さんは、通常の使い方では中々上手くいきませんでした。
吸引しきれなくて、唾液が口からあふれてしまうのです。あふれた唾液で頬から顎から首元まで、ぐっしょり濡れてしまう。
不快だし皮膚トラブルの元にもなるので、カニューレホルダーにティッシュを何枚か挟んだ上に、顎にタオルをぐるりと巻きつけてガードしていたそうです。
で、この「二股式」です。
これは介護スタッフの方が提案してくださったんだそうです。関わっておられる患者さんが、これで上手くいった、ということなのでしょう。
そういう情報を発信してくださるのは、本当にありがたいことです。
やり方は簡単です。
いつもの道具の他に必要なのは三方活栓だけ。
三方活栓☟
「三方活栓」とは、通常は点滴に使う医療機器です。
メインの点滴を流しながら、側管から投薬する時なんかに使います。
そんなに値が張るものではないので、主治医の先生に頼めば、くれます(たぶん)。
くれなかったらネットでも購入できます。
【やり方】
ちょいわかりにくいですが、水色で丸く囲ってあるのが三方活栓。
そこに吸引チューブを2本つなげます(赤矢印)。
もう一方(水色の矢印)を低圧持続吸引器のモーターにつなぎます。
吸引チューブをお口の両側から入れて、唾液を吸いやすい位置で固定します。
一方のチューブを洗濯ばさみでパジャマに留めて固定しています。
志垣さんは、これが著効!!
今もご本人の希望でカニューレホルダーにティッシュを挟んでいますが、全く濡れなくなりました。
唾液の吸引回数も格段に減ったそうです。
ご本人も介護スタッフも大助かり、とのこと。大成功なのでした!
今のところ、不都合なことは全く起こっていません。
ただし、試してみる方は、吸引力が良すぎて口の中が乾いてしまわないよう、注意してくださいね。
志垣さんは、ALSを発症したのが8年前、当院で訪問診療を開始したのが6年前。以後長いお付き合いになります。
最初は私が主治医を務め、その後は長年にわたり深谷先生に担当していただいています。
呼吸器をつけて退院され、在宅療養を始めたばかりの頃は、体のあちこちの痛み、意思がうまく伝わらないもどかしさ、主介護者であるお兄さんが疲労とストレスでつぶれてしまうんじゃないかという不安、等々等々、辛いこと、苦しいことがたくさんありました。
実際、当時は会うたびにポロポロ泣いていたものです・・・。
この6年で病状は更に進行しましたが、志垣さんもお兄さんもそれに勝るとも劣らぬほど成長されたように感じます。
(何歳になっても「成長」はあります。)
時々深谷先生の代理で伺うのですが、いつも本当に穏やかな笑顔で迎えてくれます。
眼裂が狭く目の動きも制限があるので、文字盤を使う難易度は高いのですが、お兄さんが上手に使いこなして彼女の言葉を伝えてくれます。
そして多くの熱心なスタッフに支えられ、不便ではあっても穏やかな気持ちで、日々療養されています。
有り難いことです。
「ありがとう」の語源は仏典の「有り難し」。
人の生を享(う)くるは難く やがて死すべきもの 今いのちあるは 有り難し
生きてあることの「有り難さ」を普段は忘れて過ごしているわけなのですが、こんな日は心底「有り難い」と思えるのでした。