🍒コミュニケーションエイド実技研修会を行いました🍒
🍒コミュニケーションエイド実技研修会を行いました🍒
2022年11月21日
さくらクリニック練馬 医療秘書の竹下です。
10月21日にココネリ研修室2にてさくらクリニック練馬主催のコミュニケーションエイド研修会を行いました。
神経難病の患者様(特に ALS)の支援に欠かせないコミュニケーションエイドの意思伝達装置を参加者に体験して頂きました。
講師にはダブル技研の稲葉慈子様をお招きしました。
その時の様子をレポートさせていただきます。
現地開催リベンジ
10月は2つの勉強会を開催しました。
1つ目は10月17日に行った「神経難病に対するコミュニケーション支援」の勉強会、
2つ目が今回の10月21日に行ったコミュニケーションエイド実技研修会です。
元々は7月15日に現地参加での勉強会を行う予定でしたが、新型コロナの蔓延していた時期であったたため、残念ながら現地参加は中止となり、オンラインでの開催となりました。
今回多くの方に来ていただき、無事現地開催のリベンジを果たすことが出来ました。
参加して頂いた皆様、本当にありがとうございました。
☟前回のコミュニケーションエイド研修会の様子はこちら
🍒コミュニケーションエイド研修会レポート🍒
勉強会で使用したコミュニケーションツールについて
今回の勉強会で参加者に体験して頂いた機器は以下の4種類です。
説明は稲葉さんが質疑応答時に話してくださった内容から引用させていただいております。
①miyasuku EyeConSW(みやすく)
・視線操作だけでなく、スイッチのみの操作においても文字盤の部分拡大ができ、視力が悪い方でも利用しやすいとのことです。
・miyasuku キーボードメーカーを使用することで、文字盤のカスタマイズを自由に行うことが出来ます。
(例を挙げると、50音以外にもよく使う定型文のみ表示する、文字の配置の変更する、等幅広くカスタマイズが可能とのことです。)
②TCスキャン
・シンプルで分かりやすい文字盤から様々なシーンを想定した文字盤がデフォルトで用意されています。
・文字盤に限らず、メニュー画面や環境制御画面など、どの操作画面も自由にカスタマイズができる非常に自由度の高い機器です。
③OriHime eye+Switch(オリヒメ)
・分身ロボットOriHimeとつなげて使うことが出来ます。
・設定はすべての項目において説明書きが添えてあり非常にシンプルな見た目と設定項目で、変更の目的に合わせて簡単に設定を変更する事ができます。
④eeyes(イーアイズ)
・パソコンスキルがあまりなくても使いやすいコミュニケーションツールです。
・キーボード画面でのショートカットが充実しているので、設定に行かなくても入力した文字のサイズなどの設定変更が出来ます。
・絵文字の用意が充実しており、これらを利用してオリジナルパネルを作成できます。
・文字盤編集画面で配置を変えたりパネルの大きさを個別に変更できます。
今回説明のみで実技での使用はしませんでしたが、伝の心も紹介して下さいました。
⑤伝の心
・意思伝達装置の始まりと言っても過言ではない、歴史のある代表的な伝達装置です。
・文字盤の大きさ(高さ)を調節でき、定型文のカスタマイズや階層をつけた展開型の定型文も作成できます。
コミュニケーションエイドは上記のように機種の見た目、操作感も違うので、ダブル技研ではご本人のもとへ直接持っていき、実際に体験してもらうようにしているとのことです。
また、機種選びも大事なのですが、特に大事なのは「スイッチ選び」と稲葉さんは仰っていました。ご本人の手の代わりになるものですので、状態に合わせて押しやすさや使いやすさなどを確認する必要があるとのことです。
詳細についてはダブル技研のHPをご覧ください。
ダブル技研のHPはこちら
実技体験の様子①スイッチ入力
ここからは実技体験の様子をお伝えします。
まず最初にスイッチ入力の体験をしていただきました。
※手前から「miyasuku EyeConSW」「TCスキャン」「OriHime eye+Switch」「eeyes」です。
スイッチ入力は、文字の決定をスイッチを押して行います。
文字盤の50音の行(「あいうえお」「かきくけこ」など)ごとにカーソルが自動で動くので(見えづらいですが、下の写真だと水色の部分「ま」行)、入力したい文字がある行に来たときにクリックします。
すると今度は列(下の写真だとオレンジの十字の中心部分の水色のマスの下の列が「ま、み、む、め、も」)に沿って動くので、目的の文字に来たときにクリックします。この2つの動作で1文字入力が出来ます。
いくつかのグループに分かれ、順番にコミュニケーションエイドを体験して頂いていましたが、皆さん自分の番が来るのが待ちきれずに機器の周りに集まり、稲葉さんの説明を熱心に聞いていらっしゃいました。
上記で説明したように、スイッチ入力は押したい文字の所にカーソルが来るまで待つ必要があるのですが、待てずに連続で押してしまい、思い通りに入力できない方もいました。
実技体験時間は1回につき約5分程度でしたが、最後の方になると「こんにちは」などの短い文字なら何とか入力できた、という方も出てきました。
実技体験の様子②視線入力
次に視線入力の実技体験を行いました。
視線入力とは、視線のみで端末を操作する装置です。
視線検出式入力装置から出ている赤外線で視点の場所(どこを見ているのか)や、眼球の動きを計測し、追跡するアイトラッキングという方法で文字を入力します。
※下の写真のオレンジの円が視線検出式入力装置(tobii)
視線入力をする上で大事なポイントを稲葉さんより2つ、教えて下さりました。
- 眼に力を入れずリラックスして見る
- 顔を動かさずに眼だけを動かす
視線入力はスイッチ入力より苦戦されていた方が多かったです。
入力したい文字を視線で選び、しばらく見つめることで入力する文字を決定するため、長時間目を開けている必要があります。
そのことからか、体験中に目が疲れる、肩が凝った、などの声が多く上がっていました。
ポイントの2つ目の「顔を動かさずに眼だけを動かす」は、頭に入っていてもつい顔を動かしてしまう方が多かったです。
下の写真では、赤い円の中にある「閉じる」というボタンに目線を持っていこうとしていますが、頭も一緒に動いてしまっているため、目線自体は動いておらず、上手く操作が出来ていません。
他の方も顔を動かしていないと思っていても、下に動かそうと思い顎を引いてしまったり、逆に上に動かそうとしてのけぞってしまい、視線入力が上手くいかないと仰っている方がいました。
上手くいかない参加者様へは稲葉さんから「自分の手で頭を固定してみて」との提案がありました。
試してみるとうまく固定が出来、無事に視線入力を行うことが出来ていました。
他にも
・狙っている文字を通過してしまい、なかなか入力できずもどかしい。
・どこを見ていいか分からなくなってくる。
・「今日は(こんにちは)」と打つだけで5分もかかった。
などの感想が上がっていました。
稲葉さんは「慣れればできるようになりますよ」と仰っていました。
私も、研修会の開始前に視線入力を少し体験させて頂いたのですが、目的の文字に目線をもっていっているはずですが少ししか動かなかったり、文字を決定するまで見つめ続けることが辛く、途中でキャンセルされてしまったりしてほとんど文字を打つことが出来ませんでした。
院長の訪問診療に同行し、患者さんが実際に視線入力をされている様子を見させていただく場面がありますが、あのようにスムーズに会話できるようになるまでの努力と時間を考えると本当に頭が上がりません。
スイッチと視線入力のコラボレーション
最後に、稲葉さんよりデモとしてスイッチと視線入力のコラボレーションについて披露して下さいました。
スイッチと視線入力のコラボレーションとは、視線で目的の所へ合わせ、決定はスイッチで行う方法です。
この方法ですと、見ているだけでは反応しません。そのため誤入力も少なく済み、疲れた場合には目を休めることもできます。
視線が動いてスイッチが押せる方にはお勧めです、と仰っていました。
稲葉さんのデモの後、稲葉さんへの質疑応答を行いました。
勉強熱心な参加者が多く、今回の勉強会では説明を行っていない「マイボイス」や「コエステーション」(自分の声を事前に録音しておき、コミュニケーションエイドと組み合わせてテキスト入力を読み上げるコミュニケーション支援の一つ)についての質問も見られました。
最後に
最後に院長よりお言葉をいただきました。
・コミュニケーション支援はセラピストがやるもの、医者は関係ないと思ってはいけません。患者さんの支援して行く上で欠かせないものなので誰も無縁ではいられません。
・今回体験して”むずかしさ”や”まどろっこしさ”を実感し、そういう思いをしながら患者さんが一生懸命一つ一つ言葉を紡いでいく感じを体験して頂くことで、今後の支援に繋がっていくのではないかと思います。
ダブル技研の稲葉様に関しましては7月に引き続き講師としてご尽力していただき、本当にありがとうございました。
さくらクリニック練馬では今後も勉強していく機会を設けていこうと思いますので、その時にはご参加いただけると幸いです。