Homeイベント参加レポート > 【2025.5.30勉強会 参加レポート 後半】家族の負担軽減と将来の問題(家族の声)その2

【2025.5.30勉強会 参加レポート 後半】家族の負担軽減と将来の問題(家族の声)その2

【2025.5.30勉強会 参加レポート 後半】家族の負担軽減と将来の問題(家族の声)その2

デフォルト画像

🌸さくらクリニック練馬佐藤院長から質問
お父さん(発表者=私)が70歳間近で、やはりどんどん年をとっていくと、将来的に「親なきあと」として、何年か後に年老い、また亡くなった場合など、今までのように介護に携われなくなった時のビジョン、具体的にどうしようと考えていますか?

考えないわけにはいかない、できればあまり考えたくないテーマではあります。もうすぐ自分(父)は70歳、息子35歳でそんなに不自然な年齢差ではないですが、あと10年で「8050問題」となる時期だからもうかなりアウトと思います。

子供が自立できるなら自立させたいが、親がやっていることを単に誰かに代わってもらうのは「自立」ではないと思います。もう少し子供が「自分のチカラ」で頑張らないと。

息子は今でも医療的に解決できていない大きないくつかの課題を抱えています。そのためにショートステイやグループホームが利用できません。

解決できない問題の一つが「難治性てんかん」による発作が続いていることで、長年服薬によるコントロールを続けているものの、今でも頻回に倒れます。立っていても「バタっ」、座っていても「バタっっ」と。この発作を押さえるために外科的手術やVNSという方法もありますが、全身麻酔が難しい息子はいずれもチャレンジが困難です。残された手段は「ずっと寝かせておく」ことになりますが、それは自立とはほど遠いと感じます。

もう一つの難題、口蓋形成不全による誤嚥が多いという問題で、唾液も相当量誤嚥しています。幸い誤嚥性肺炎にまでなることはあまりありませんが、この先リスクを避けるとすれば口から食べない「全食経管栄養」か、声を失う「咽頭気管分離手術」が考えられます。今は美味しそうに食べ、声(会話ではない)も自由に出していますが、いずれその楽しみを失ってしまうかも知れません。

親として残された時間は、できるだけ息子に付き添い、この家で息子の小さな幸せを大切にしたいと思います。

そうは言っても、「そのうち」も「いつかは」も必ず来ます。入所施設が受け入れてくださる日が整ったら決断することになると思いますが、まだ今は対応できる施設がありません。

少なくともあと3年ぐらいの間に何か一つでもいいので良い方向へ改善されることを期待したい。3年先!親子が元気かどうかは想像つきませんが、在宅支援チームの皆様の温かいご支援をいただきながら毎日を大切にし、例え「親なきあと」を迎えたとしても、息子が元気で楽しく生きていけることを祈るばかりです。

🌸さくらクリニック練馬 佐藤院長のコメント
当事者の方が現場の状態を発信していただけるのは本当に貴重で、私たちもとても勉強になりますし、世の中の人たちにも知ってもらいたいと思います。そういうものが何らかの形で活動につながっていければと…。
毎日毎日、なるべく楽しく前を向いて、問題意識を持ちながらも、患者・ご家族と医療者が一緒に楽しく、在宅での暮らしを維持していくということをやっていきましょう。

 

参加ご家族様から「重度訪問介護」に関する貴重な情報を頂きました

勉強会終了後、ご家族様からお声がけをいただきました。そのご家族様の息子さんもさくらクリニックの患者さんで、現在は訪問医療のほかに重度訪問介護の支援を受けており、親の負担を軽減するにはこの制度がとても助かるというアドバイスをいただきました。

我が家は、訪問医療(診療、看護・リハビリ)のほか、週4日の通所施設、週1~2回移動支援による散歩のお世話になっていますが、その他の時間はすべて親がベタで介護しています。もし親のどちらかがケガや病気、若しくは亡くなり、施設にも入所できない場合は「重度訪問介護」のお世話になるしかありません。
区の担当に「先を考え、息子が慣れるために少しずつ重度訪問介護のお世話になってみたい」と相談しましたところ、重度訪問介護の事業所は、ある程度連続した長い時間で一定日数(ほぼ毎日)の利用がないとヘルパーさんの引き受け手がないとのことでした。
区の担当者も我が家のことを良く理解してくださっているのですが、もう「お試し」とか「必要な時だけ」という余裕は無く、「その日」は目の前というのが現実だと思います。

一番心配なのは、解決できていない医療的な治療・処置について大きな決断が必要となった時、「親なき」だったらどうなってしまうのか…

これらを含め息子自身がこの変化を受け入れ、今後の人生を支援者の皆様とともに歩ませていただけるよう願うばかりです。

【御礼】
医療・福祉制度の活用や、在宅でのちょっとした工夫など、在宅療養ご家族様からこのような貴重な情報をいただけることはとても大切なことです。お声がけしてくださったご家族様、また、さくらクリニック様がこのような場を提供してくださったことに深く感謝いたします。

– – -【追記】- – –

【家族と医療者がつながる場所-在宅療養を支える新たな一歩】

このタイトルは、本合同勉強会開催レポートをホームページに公開した時に、さくらクリニックさんがネーミングしたものです。
>>こちら

勉強会は、「つながる」、「場所」として有効な場で、私たちにとっても「新たな一歩、新しい出会い」となったと思います。

また、佐藤院長コメントの「患者・ご家族と医療者が一緒に楽しく、在宅での暮らしを維持していくこと」は、まさに私たち家族が最も望んでいる在宅療養の姿です。

息子の脳挫傷以降、多くの「つながる場所」と「人との出会い」を経験しましたので少し書き残しておきたいと思います。

【病院での出会い】

病院外来は体調不良やけがで出向くので、この「出向く」と「長い時間待つ」の負担も加わり心も体もネガティブになりがちだと思います。また緊急入院は見通しが立たない不安で落ち着きませんが、そこではいろいろな出会いがありました。
息子の救急搬送は2018年12月のコロナ感染拡大前でしたので、面会時間に付き添うことができました。
長い入院では、それこそ一期一会ですが、医療スタッフのほか、他の患者さんやご家族との温かい支え合いが回復に向けて大きな力になったと感じます。

■急性期病院(救命病棟)
手術直後は1人隔離された部屋で面会者は中に入れず、窓越しで執刀医の説明を受けながら見守るだけでした。そばで息子の手を握ってあげることもできないという重圧の中で、次々必要となる処置の同意を求められ、ただひたすらサインをした記憶があります。

3日ほどで少し安定(というよりも次の患者さんが入れるように)し、4人部屋に移りました。
まだ意識の回復がハッキリしていない段階でしたが、ようやく面会できるようになり、付き添える時間は午前1時間、昼1時間、夕方2時間と細切れに設定されていました。
また、緊急の処置が入ると面会者は病室を出なければならず、そのまま時間が終わってしまったことも何度かありました。隙間の待ち時間は病棟に併設されている狭い待合室で過ごしますが、3家族ぐらいしか入れず、中では皆さんほとんど無言でした。

この病棟にいる間に、ちょうど年末年始にかかってしまったので、息子の処置をされていた看護師さんに「明けましておめでとうございます」という挨拶をして良いか躊躇していたら、先に看護師さんの方から新年のご挨拶をいただきました。
年末年始、日夜関わらずたいへんな看護をしていただいているのに、こちらの戸惑っている様子を察したのか、「私たちには日常のことなので」とお気遣いいただいてしまい、ますます恐縮した次第です。

■急性期病院(一般病棟)
脳外科の一般病棟では、ナースステーションすぐそばの観察室(4人部屋)に入りました。
重症患者さんが多く、まだ自由に体を起こしたりはできません。面会のご家族との会話も弾みませんが、そばにいてくれる安心感は伝わります。息子と同じような世代の患者さんご家族とは時折お話することができました。

執刀していただいた脳外科医は、私たちがいつ面会に来るかを気にかけてくださっているようで見かける度にお声がけをいただき、今の様子やこれからのことを教えてくださいました。

またいつもお世話になっていた看護師さんのお一人が、退院前日に息子の車いすを押しながら外の景色(エントランスドアから数メートル先までの初外出)を見せに連れて行ってくださり、「ここの病院に入院したこと、覚えていてね~」と、嬉しい思い出をいただきました。

■回復期(リハビリ)病院
息子が入院した回復期病院は、ほとんどが高齢の患者さん(平均年齢は80歳超と聞きました。)で、息子以外に若い方は一人もいませんでした。

そう言えば、急性期の脳外科医から「若い患者は回復期に転院せず直接家に帰る人が多い」と聞いていましたし、重い障害のお子さんを持つご家族からは「先天性の重度障害があると病院が受け入れてくれない」という話も聞いていたので、息子も転院できないのではと思っておりましたが、なんとか受け入れていただくことができ、温かい看護とリハビリによって回復が進んだことは本当にありがたいことでした。

■看護師さんとの会話
経管栄養の時間、半固形栄養剤が注入し終わる(20~30分程度)まで看護師さんがずっと担当してくださるので、その時がいろいろお話を聞くことができるチャンスでした。

息子も優しい看護師さんと家族と一緒に食事しているような幸せを感じ取っていたと思います。息子自身は会話ができないので、親がそばにいられず看護師さんだけが黙々と注入する食事では切なかったかも知れません。

■リハビリ職スタッフ(セラピスト)さんとの会話
毎日3職種のスタッフさんから機能回復の指導を受けます。息子はうまれつき動かせない関節があることや意思疎通ができないことなどを分かっていただかないとリハビリがうまくできません。

そこで、通訳がてらリハビリ中できるだけ付き添うようにしました。息子のことをお伝えするだけでなく、それぞれご専門(PT、OT、ST)のことや病院のことなどもお聞きすることができ、その会話によってお互いの理解が進み、楽しみながらリハビリができたと思います。

■たくさんの職種の皆様のお世話に
入院期間が長かったので、医師、看護・リハビリスタッフに加えて、日々身の回りのお手伝いをしてくださる介護士さん、他病院受診などを手配してくださった医療相談員さん、家族の悩みも聞いてくださった臨床心理士さん、栄養摂取量など丁寧に説明してくださった管理栄養士さん、いつもにっこり見守ってくださった薬剤師さんなど、本当に多くの皆さんに支えられていることを実感しました。

皆さんのご尽力、ご配慮に深く感謝申し上げます。

■患者さんにも
リハビリを頑張られている元気な女性患者さんが多かったことで、お声がけをいただくことが結構ありました。

息子が自主トレで病棟廊下をグルグル回る度に手を振ってくださったり、にっこり応援してくださったり、自然と顔見知りとなる感じです。中には「笑顔でリハビリ頑張っている(息子の)姿を見ると、私も頑張らなきゃと思うのよね」とか、「退院したら一人暮らしに戻るんだけど、今は(息子の明るい笑顔を見ると)毎日温かい気持ちでいられるわ」とお話しくださる方もいらっしゃり、息子も家族のような温かい雰囲気で過ごせたことが心の支えになったと思います。

 

【在宅では】

在宅は患者・家族が自然体で生活できる場で、体調が悪い時でも過度に緊張せず、訪問の医師や看護師さんに「いつも」を共有していただけるので安心です。また、日々の困りごとや些細なことも相談させていただいています。もちろん貴重な訪問時間ですから多くは話せませんが、ちょっとした会話から双方にとって重要な情報や役立つヒントが得られるようになっていると感じます。

■他のご家族はどうやっているのだろう?
例えば「吸引」は、いくら指導を受けたとしても、慣れてくれば結局は「我が家流(自己流)」になりがちです。
意外に思ったのは、看護師さんによっても手技に違いがあることで、病棟の看護師さん同士でも、在宅の看護師さん同士でもそれを感じました。そのことについてある看護師さんから「必ずしも手技を統一しないのは、それぞれの看護師さんの経験、工夫と努力を尊重しているからいいんだよ」と聞いたことがあります。
確かに出身看護学校、入職した病院、配属病棟、教えてくれた先輩、転職先などによってそれぞれ手技が違っているようですし、出回っているマニュアルや手引きを見てもいろいろあるので、なるほどと思った次第です。一方、病棟で細かくダメ出しをして回っている師長さんをお見かけしたりで、なかなか難しい世界だなと感じました。

正解は一つでは無い!現実は24時間吸引できるのは一緒にいる親しかいない。いいとこ取り+自己研鑽でさらに自己流を極めようということかな。

さて、そこで思ったのは「他のご家族はどうしているのだろう?」ということです。自己流になりがちな手技ですが、もしかしたら他のご家族のやり方にすごいヒントがあるかもしれません。なんたって、皆さん一番の愛を持って家族のケアを行っているわけですから。

その他にも、個人ではなかなか買えない医療物品・消耗品の入手や節約方法、複雑な福祉・医療制度の利用、ごく些細な困り事など、実際に体験、解決されているご家族の情報はとても貴重です。ただ、残念ながらそういう情報を発信する余裕は1ミリもないのが実情かも知れません。

■他の患者・ご家族や医療者との情報交換の場
家の中にこもっていると社会との接触が途絶しがちで、情報を得る手段はネット情報になります。しかし、こちらが知りたいことは、「誰か」が発信しない限り知ることができず、その内容が信頼できるかも不安です。

そうなると、例えばさくらクリニックのサイトに寄稿されている闘病記や体験記などは、実際にクリニックが訪問された在宅患者・ご家族さんからの貴重な情報ですので、より共感度が高まります。

今はその情報を読ませていただいているだけですが、クリニックが実施するイベント(セミナー、勉強会、展示会等)などの場に、患者・家族も参加し、多くの方と交流・接点ができるようになればとても心強いと思います。

また、現場ノウハウについて一番情報を持っている、訪問看護師さんやセラピストさん、さらに通所施設の医療スタッフの皆さんなどにも参加していただけると「家族と医療者がつながる場所-在宅療養を支える新たな一歩」が実現できるのではと期待しております。

 

★さくらクリニックHP(中野・練馬)や「さくら通信」掲載例★

🌸闘病記、体験記、ブログ、エッセイなど

>>こちら

<さくら>:患者さんのご紹介

<患者>:Yさんのエッセイ

<家族>:闘病記「ドリームチームに支えられて」

<家族>:介護体験記

 

🌸20周年記念イベント(2023年4月7日)

患者さんの在宅での様子、作品展示、動画上映など

<さくら>:開催報告

<さくら>:勉強会・展示会レポート

<家族>:参加レポート

 

🌸合同勉強会(2025年5月30日)

セミナー聴講、発表、質疑応答、意見交換など

<さくら>:開催報告

 

🌸さくら通信(機関紙:不定期)

<さくら>:さくら通信

 

2025年4月 東京都中野区新井薬師梅照院しだれ桜
来年も見られますように!

 

さくらクリニックからのコメント

いかがでしたか。
ご家族様の立場から「在宅療養の現実と希望」「家族の負担軽減と将来の問題」について語っていただき、さらに本寄稿記事には勉強会当日伝えきれなかったことの追記までいただきました。貴重なお声を綴っていただきましたこと、改めて感謝申し上げます。
記事に込められた「思い」が、多くの皆様に伝わってくだされば嬉しく存じます。

さくらクリニックは、在宅での安定した療養生活をご家族様と一緒に進めるパートナーとして、今後も良い医療を提供してまいります。

また、当院の合同勉強会や当サイト掲載記事などが在宅療養の患者様・ご家族様、そして在宅医療関係者様にとっての「つながる場所(架け橋)」となり、それを通じて新たな出会いのきっかけを一つでも多く提供できる医療機関であり続けたいと、そう願っております。

ありがとうございました。

医療法人社団緑の森 さくらクリニック
ブログ担当

 



関連記事一覧





Copyright © さくらクリニック All Rights Reserved.